台湾iPhone生産受託企業がEV市場を狙うワケ 童子賢ペガトロン会長が狙うEV市場での勝機
実例として、ノートパソコンの最盛期が挙げられる。当時のノートパソコン市場はトップ10が有力ブランドであり、中でもトップ5の勢力が拮抗している状態だった。その結果、製品の種類が豊富になり、部品とサブモジュールは多品種少量生産体制になった。この多品種少量生産はメーカーに大きな利益をもたらした。
例えば90年代の自作パソコン市場におけるASUSのマザーボードの粗利率は30%以上、アドバンテックの産業用コンピューターの粗利率はつねに40%を超えていた。この高い粗利率は技術力だけでなく、顧客の分散とニーズに合わせた細やかなサービス展開による結果だ。
基礎材料の開発がネックの台湾企業
このように大きな利益を期待できるEV産業だが、台湾企業が参入するには多くの課題がある。それは、台湾の情報産業は部品やシステムの製造に偏りがちで、基礎材料の開発にまで踏み込めていないという点だ。
EV普及の鍵となるバッテリー分野を見てみたい。台湾の電池産業は、韓国のLGや中国のBYD(比亜迪)、CATL(寧德時代)ほどのノウハウや歴史はない。台湾の電池2大メーカーであるシンプロ・テクノロジー(新普科技)とダイナパック・インターナショナル・テクノロジー(順達科技)は、バッテリーモジュールの生産を行えたとしても、バッテリーを基礎から開発できるかというと疑問だ。
今、EVのバッテリー開発戦争で注目されているのが、トヨタが実用化を目指している全固体電池だ。全固体電池の開発へのチャレンジと量産化の成功が、EV市場における競争力と密接に関係してくると言えるだろう。
多くの企業にチャンスがあるEV産業は大航海時代のようなものだ。しかし、歴史上の大航海時代と同様に、EV大航海は必ずしも「新大陸の第一発見者」が「新大陸の覇者」になるとは限らない。
だが、それでもわれわれ電子部品メーカーは新しいチャンスにチャレンジする必要がある。パソコン産業とスマートフォン市場は過密状態で、成長はすでに鈍化している。台湾の電子部品産業にはEV大航海時代がもたらす新しい風が必要なのだ。
EVへのチャレンジで、台湾を代表する電子機器のサプライヤーであるクアンタ・コンピューター(広達電脳)、鴻海、私たちペガトロン、それぞれがたどる道は異なるかもしれない。
最後に勝つのは誰か。現在、言えるのはEV産業には「勝機はあるが、確実に勝つ方法はない」と言うことだけだ。今後も多くの変化が待ち受けていることだろう。
(台湾『今周刊』2021年2月22日)
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