ジェフ・ベゾスがやっている「決断を早める」方法 決めないといけないことには2つの種類がある

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それはこの世で最悪の意思決定プロセスだ。みんなのやる気が削がれるし、場当たり的な結論しか出なくなる。上に立つ者が、さらに上位のリーダーに決断を仰ぐほうがはるかにいい。意見の分かれる意思決定は、早く上に話をあげるべきだ。担当者たちにあれこれ1年も議論をさせて疲弊させてはいけない。上の人間が解決すべきだ。

チーム内で意見が分かれて話が進まないようなら、上位の処理事項にすること。とにかく早く上にあげたほうがいい。そして上に立つ人がさまざまな見解を聞いたうえで、こう言うべきだ。

「みんな、聞いてくれ。正解は誰にもわからないが、私に任せてほしい。反対でも、コミットしてくれ。こちらの方向性でいくと決めた。だから反対していた者も、決めたことにコミットしてほしい」

上司と部下で意見が分かれたときは?

ここからが重要な点だ。上司と部下とで意見が分かれることがある。部下はあるやり方がいいと信じ、上司は別のやり方を貫きたいと思っている。

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そうしたときは、上司が「反対してもコミット」すべきケースのほうが多い。私はしょっちゅう「反対してもコミット」している。何時間も、何日も、ときには何週間も意見を戦わせることもある。そのうえで言う。

「よし、私はこの案には絶対反対だが、君たちのほうが私より現場のことをわかっている。君たちのやり方でやってくれ。あとになって『そら見たことか』なんて決して言わないと約束するから」

こうすれば周囲は落ち着く。「上の人間は判断力に優れている」ということを前提にして、話を前に進められるからだ。判断力は非常に価値があるもので、だからこそたとえ部下のほうが現場のことをよく知っていたとしても、上司が自分の意見を通すべきときもある。それもひとつの判断だ。

そしてときには、「この人のことはよくわかっている、彼らとは長く一緒に働いてきた。彼らの判断なら間違いない。私は違うと思うが、彼らのほうが自分より深くわかっているはずだ。だから私は反対だがコミットする」ということもあるのだ。

ジェフ・ベゾス アマゾン創業者、元CEO

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Jeff Bezos

宇宙飛行のコスト削減と安全性向上に取り組む宇宙開発企業、ブルーオリジン創業者。ワシントン・ポスト社オーナー。2018年、ホームレスの家族を支援する非営利団体の支援や、低所得地域の優良な幼稚園のネットワーク構築に注力するベゾス・デイワン基金を設立。1986年、プリンストン大学を電気工学とコンピューターサイエンスでサマ・カム・ラウディ(最優秀)、ファイ・ベータ・カッパ(全米優等学生友愛
会)メンバーとして卒業、1999年、タイム誌「パーソン・オブ・ザ・イヤー」選出。

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