日本人は「投資に疎いこと」の損失をわかってない お金や投資についてあまりにも教えなさすぎる

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一方、学校教育以外の社会人向け投資教育の現場でも、日本ではまだ改善の余地があるのではないか。たとえば、株式投資や投資信託への投資は、価格が大きく変動するために、長年投資の世界で生きてきた人でも、そのリスクを正確に把握するのは難しい。実際に、投資経験のない人が机上の論理だけで投資教育をしても、あまり意味がないという指摘もある。

とりわけ、アベノミクスが始まってから投資の世界に入ってきた人は、その多くが20~30代前半の若い人だと考えられるが、アベノミクス以降は日銀が異次元の金融緩和を実施したために、株式市場など金融マーケットに大量のマネーが流れ込み、市場が大きく暴落するような局面がない。

株式投資や暗号資産などでアベノミクス以降に「おくりびと(いわゆる億万長者)」になった人がいる。そうした人の成功体験を聞いても、本当の意味の金融教育、投資教育にはならないということだ。投資教育の本質は、金融マーケットのリスクを正確に把握することであり、億万長者の成功体験が役立つわけではない。

リスクについてどう教えられるか

そもそも日本の金融教育は、社会人であってもなかなかその機会が与えられていない。確かに証券会社や銀行等が実施する「投資セミナー」には、数多くの投資家が集まって講義を受ける人があとをたたないが、その効果にはやや疑問がある。実際に投資するときに、どんなリスクがあって、そのリスクをどう回避するのかを教えなければ意味がない。いまだに現金・預金が6割近い日本の状況から推察すると、社会人向けの投資教育の効果が表れていないと考えたほうがいいだろう。

たとえば、株式投資のセミナーでは「買う」ことしか教えない傾向が強い。証券会社のセミナーだから仕方がないと言ってしまえばそれまでだが、本当の意味でのパーソナルファイナンス=個人の資産運用術としてはやや偏っている。株式投資で儲けるためには、株価が大きく下がったときにも対応する方法まで教えなければ意味がない。

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