USJが低迷→驚異的復活を遂げた最も重要な本質 最も困難なのは計画の策定や商圏の分析ではない

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さらに、USJは大型企画として「ハロウィン」に焦点を当てることを決めます。今でこそハロウィンは渋谷のスクランブル交差点付近の盛り上がりなどで知られるイベントとして定着しつつありますが、2010年前後の日本ではまだ、マイナーなイベントでした。

そこにあえてハロウィンに着目し、2011年9月から11月にかけて、「ハロウィーン・ホラー・ナイト」を実施したのです。このイベントは、テーマパークに何百体ものゾンビを配置する異色のイベントで、テーマパーク内をお化け屋敷にするという前代未聞の企画でした。

「キッズ・フリープログラム」と「ハロウィーン・ホラー・ナイト」の特色を一言で言い表すと、「お金をかけずに集客する」ことといえます。一般的な商売の常識に則れば、集客には一定の投資が必要で、目玉施設の開業などの設備投資や、テレビコマーシャルの放映などの広告宣伝が常套手段です。しかしこのような集客には、まず何よりお金がかかるため、当時のUSJは選択することができませんでした。こうした「お金を使った集客」に代わって、「お金を使わないこと」を貫いたのです。

結果として「キッズ・フリープログラム」と「ハロウィーン・ホラー・ナイト」は集客力の向上に大きく寄与しました。2011年4月~2012年3月の1年間で、USJの入場者数は880万人を記録し、東日本大震災の直後にもかかわらず、前年よりも集客を増大させました。

2000年代を通じて長期的な集客力の低下に悩んでいたUSJにとって、東日本大震災の影響下でも集客を回復させたという実績は、社員が自信を取り戻すきっかけにもなりました。

改善した財務体質と集客を土台に、巨額投資を実行

USJが、その復活の総仕上げとして取り組んだのが、巨額投資を伴う目玉施設の新設でした。

ハロウィンなどのイベントによって関西圏のファミリー層という顧客は獲得したものの、この時点でのUSJは「関西の一テーマパーク」に過ぎませんでした。そこで、USJを全国区にするために、目玉施設の投資へと舵を切ったのです。

2014年にUSJは「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」という目玉施設を開業して大勝負に出ます。これは450億円を投資した本格的な施設で、従来の「お金をかけずに集客する」という方法からは一線を画すものでした。巨額投資のためにリスクは伴いますが、USJは集客増加によって財務体質を改善しつつあり、巨額の設備投資を決断したのです。

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