失われた30年間で、日本は労働者の給料がほとんど上がっていない……というのはよく知られることだ。20万円前後の手取りで東京に住むとなると、少しでもピンチに陥ると、女性の場合、美容代が削られやすいのかもしれない。瞳さんの場合は、その後なんとか精神的に復調し、転職も成功させたようだが、ブラック企業の犠牲者になっていれば違う未来が待ち受けていた可能性もあるだろう。
だからこそ、返済に対してはこんな気持ちもあるようだ。
「親が兄に対して何百万円もポンと出しているのを見ると、私も親にお金を借りて、毎月ではなく返せるタイミングで返すほうが、まだ楽だったのかなとも思ったりもしますよね。親なら奨学金と違って、利息もつかないですし」
奨学金で「ローンに抵抗感」
"物分りのいい2番目の子”だったこともあり、兄にお金が注ぎ込まれるのを横目に、自身は奨学金を借りることになった瞳さん。彼女の価値観や生き方に、奨学金はどんな変化を及ぼしたのだろうか? 尋ねると、少し考えたのち、返ってきたのは意外な言葉だった。
「ローンを組むことに抵抗を感じるようになりましたね。借金って、未来の自分に一方的に期待し、責任を押し付ける行為だと思うんです。『今の私には払えないけど、あなたなら払えるよね?』って。実際、新卒のときはクレジットカードで服とか買いまくって、『数カ月後の自分頑張れ!』みたいな性格でした。
でも、今ではほとんど現金払い。『今、現金で一括で買えないようなものは、数カ月後でも買うことはできない』と考えるようになったんですよね。恋人がお金に細かい人で、『カードで支払えば1%還元されるのに、もったいない……』とか言ってくるんですけど、頑なにキャッシュ派を貫いています。
そんな考えだから、家や車を買うことは、私の人生では多分ないでしょうね。私の地元はかなりの車社会なんですけど、それでも免許を取るつもりはないですね」
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