EV普及の壁「充電」の難題を解決するスゴ技の正体 驚異の新技術により電動車の時代は必ず来る!

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それでは、最先端の研究を通じて「電動車が当たり前になっている未来」を、一緒に覗いてみましょう。

自動車を作るときの廃材を使って水素を作る⁉

電動車の時代に向けた課題の1つが「化石燃料を使わずに電気を作る」です。例えば、トヨタ自動車が販売している燃料電池車「MIRAI」。これは、水素を使って電気を作っています。水素は反応後「水」になるため、クリーンなイメージがありますが、現在、水素を作る過程で化石燃料を使う方法が主流となっています。本当の意味で水素をクリーンエネルギーにするには、「化石燃料を使わず水素を作る」ことが必要なのです。

化石燃料を使わず水素を作る方法には「再生エネルギーを使った電気分解」や「副生水素の利用」などがあります。これら以外の方法で注目したいものがあります。それはズバリ! 「自動車を作るときの廃材を利用して水素を作る」というものです。

2020年、トヨタの協力のもと、高岡市のベンチャー企業アルハイテックにより「自動車製造過程で出るアルミ合金の削り粉」を利用して、純度の高い水素を安定的に作る装置が開発されました。すなわち「自動車を作るときの廃材を使って水素を作り、その水素で自動車を走らせる」ということです。

この装置は、アルミ合金の削り粉を専用の容器に入れ、独自に開発した溶液に浸すと化学反応によって水素が発生するというもので、なんと外部電源は不要。通常、水素は液化させたり圧縮させて輸送していますが、この装置はアルミ合金を使ってその場で水素を発生させるため、輸送費だけでなく二酸化炭素の排出も大幅に抑えられるのです。

それだけではありません。副産物として生じる物質(水酸化アルミニウム)は、セラミックや燃えにくいカーテンなどの原料として利用できます。これこそ、本当のクリーンエネルギーですよね。

2021年5月の北陸中日新聞によると、トヨタだけでなく、工場や教育機関、スポーツ施設などから装置導入の問い合わせが300件ほど寄せられているのだとか。世間の関心が高いことがわかります。

ちなみにこの技術、始まりはジュースやお茶の紙パックなどに用いられる「アルミ付き紙系の一般廃棄物」や、スナックの袋や錠剤のパッケージのような「アルミ付きプラスチック系一般廃棄物」など、その薄さゆえにアルミとして回収するのが難しく、焼却・埋め立て処分され、リサイクル率がほぼゼロだった廃棄物から水素を発生させるという画期的なものでした。

なんと、食品や錠剤などの包装に使用されるアルミニウムは年間約15万トンにもなるのだとか。これを利用せずに処分しているなんて、もったいないですよね。

このように「今まで廃棄していたものを利用して、必要なものを作る」というのは、これからの時代にふさわしい方法だと思いませんか。

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