イスラエルの超天才が警告する気候変動の大災厄 人類が化石燃料依存から脱さないと何が起こるか

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環境問題は一般的に想像されている以上に深刻です(写真:LEICA/PIXTA)
日本でもベストセラーとなった『サピエンス全史』をはじめ、全世界での著作累計発行部数が2100万部を突破する、歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏。
SDGsが声高に叫ばれながらも着々と進行し続ける気候変動の問題について。ハラリ氏は、今すぐにでも状況を理解し、こう申告すべきだと警鐘を鳴らします。
「私はホモ・サピエンスといいます。化石燃料依存症です。よろしくお願いします」と。
未曾有の困難が降りかかるこの時代を、私たちはどのように生きればよいのか。ハラリ氏が、21世紀を生きる現代人が直面する21の課題に焦点を当て、どのように向きあい、行動すべきかを説いた本『21 Lessons』を文庫版にして装いを新たにした『21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考』より一部抜粋、再構成してお届けします。

私たちは繊細な生態系の均衡を多く乱している

今後数十年間に、人類は核戦争に加えて、1964年には政治のレーダーにはほとんど映っていなかった新たな実存的脅威にも直面する。すなわち、生態系の崩壊だ。人間はグローバルな生物圏を多くの方面で不安定にしている。私たちは環境からますます多くの資源を取り出す一方、逆に厖大な量の廃棄物と毒物を環境に送り込み、土壌や水や大気の組成を変えている。

私たちは、何百万年もかけて形作られてきた繊細な生態系の均衡を、自分たちがどれほど多くの形で乱しているか、ほとんど気づいてさえいない。たとえば、肥料としてのリンの使用について考えてほしい。リンは少量であれば、植物の生長に不可欠の栄養分だ。だが、量が多過ぎると毒になる。現代の工業化された農業は、大量のリンで人工的に農地を肥やすことを基本としているが、高濃度のリンを含む農場からの流去水がやがて川や湖や海を汚染し、海洋生物に壊滅的な打撃を与える。アイオワ州でトウモロコシを育てている農家が、こうしてはるか南のメキシコ湾の魚を図らずも殺しているかもしれない。

そのような活動の結果、生息環境が劣化し、動植物が絶滅し、オーストラリアのグレート・バリア・リーフやアマゾンの熱帯雨林のような生態系がまるごと破壊されかねない。ホモ・サピエンスは何千年もの間、生態系の連続殺人犯として振る舞ってきたが、今や生態系の大量殺人者に変容しつつある。もし私たちがこのまま進めば、全生物のうち多くの割合が絶滅するだけでなく、人間の文明の基盤まで蝕まれかねない。

次ページ最大の脅威は気候変動という今起こっている現実
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