中学受験目前「魔の月」に気をつけたい危険な兆候 安浪京子先生が語る「やりすぎ」はこう起こる
こういった気になるご家庭には、親御さんにも、それとなく考え方や行動を変えていただくよういろいろと働きかけます。でも、なかなか変わらない方も多いのが現状です。そういった方々からは、自分のやり方が正しいと信じ切っている、あるいは耳の痛いことは聴きたくない、とりあえず中学受験期間だけやり過ごせば、と考えていらっしゃるのが伝わってきます。
子どもの反抗はありがたいこと。心して向き合おう
中学受験の勉強というのは、子どもたちが自分の気持ちを正確に言い表せない、そんな年齢から始まることがほとんどです。抵抗するすべをもたない子どもが親にやられっぱなしになってしまう可能性もあり、親もそのことに気づけない。そこが、高校受験や大学受験との違いであり、怖いところです。
しかし高学年になると、子どもたちは自分の気持ちを言葉で伝えられるようになります。それが反抗という形で現れることもあるでしょう。でも、まずは反抗してくれたこと、正直な気持ちをぶつけてくれたことを頼もしいと思うことが大切です。これは紛れもなく成長している証しです。
親からすれば、受験が終わってから反抗期に入ってほしい……というのが本音かもしれません。でも、親子の衝突は子どもにとって、自分自身の生きる力を守るうえで必要なプロセスだということをどうか忘れないでほしいと思います。そして、お子さんの言葉に真摯に耳を傾けてほしいと思います。
子どもの反抗や訴えに両親ともに耳をかさず無視し続けた結果、もう親には何を言っても無駄だと殻に閉じこもってしまった教え子もいます。子どもが一度下ろしたシャッターを開けるには、ここから長い年月がかかります。その過程で、生きる希望を失ってしまうこともあります。
子どもの訴えを無視して、とりあえず中学受験さえ乗り切れば安泰だという考えは、とても危険です。たとえ受験で思うような合格が取れなくても、まずはわが子が元気であり、生きる力を失わずにいることのほうが、よほど大切なことではないでしょうか。
直前期は、親も不安で焦ってしまう時期です。だからこそ、ぜひ“自分の機嫌を取る”ということを忘れないでほしいと思います。
子どもの一挙手一投足に目が行ってイライラや不安が募りがちな時期なのはわかります。でも、親自身の心に余裕がないと、イライラも不安も増幅するばかりで、いいことは1つもありません。最後の追い込み期は、家庭教師や個別塾の授業を追加するために、家計をやりくりして教育費を捻出されるご家庭も増えます。だからこそ、子どものやる気が感じられないと、なおさら腹が立ってしまいますよね。
ここで、プロ家庭教師として指導料をいただいている私からの提案です。たまには思い切って、その教育費をご自身の楽しみやケアに使い、自分自身を癒やすほうに回しませんか? 子どもだって、つねに不機嫌な親と一緒にいるより、穏やかな親といるほうが落ち着きます。ひいては、それが安心して勉強に向かう原動力にもなるでしょう。
入試直前期は毎日顔をつきあわせているからこそ、わが子がわからなくなる、見えなくなるときが出てきます。そんなときは、学校の先生や、塾の先生、友達の親御さんなど第三者に、普段の様子を聞いたり、気になることを相談してみることをおすすめします。別の視点や意見が加わることで、行き詰まりがちな状態に風穴が空き、残りの日々を前向きに頑張れるようになるはずです。
(構成:柳澤聖子)
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