ルークス/ワゴンR好調でもN-BOX不振の意外な訳 販売店取材で見えた「納車遅れ」2つの理由

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「ルークスは一時、半導体などの不足により、納期が5カ月程度まで遅延した。それが最近は比較的安定しており、今は約3カ月で納車できる」

ルークスの届け出台数を振り返ると、2021年6月の販売ランキングは8位で、対前年比は51.5%だった。7月は9位で対前年比は48.6%と半減している。8月も8位で76.3%と、前年割れが続いていた。

しかし、納期遅れが発生していても受注は順調だったため、納期遅れ分の届け出が活発になった9月は対前年比90.4%まで回復。10月は前年を上まわる123%に達した。これに伴って販売ランキングも2位まで浮上したのだ。

N-BOXは改良時期を見誤ったか?

ライバル車の納期遅延も影響した。特に注目されるのがN-BOXだ。10月の届け出台数は、対前年比で46.4%まで落ち込み、前述の通り9月までの軽自動車販売1位から、一気に3位まで転落した。

「N-BOX」は2020年まで6年連続で軽自動車ナンバーワンとなった人気車(写真:本田技研工業)

この原因も半導体などの不足による納期遅延かと思ったら、別の理由があった。ホンダの販売店では以下のように説明する。

「N-BOXは2021年12月9日に改良を控える。『N-WGN』や『N-ONE』と同じように、パーキングブレーキを電動式に切り替えて、車間距離を自動制御できるアダプティブクルーズコントロール(ACC)には渋滞追従機能を加える。そのため、メーカーの生産は9月下旬頃から滞り、10月に納車できる台数が大幅に減った。そこで改めて生産台数を増やすといった調節を行ったが、依然として納期は長く、届け出できる台数も少ない」

12月9日の改良後は、納車も順調に進むのか、この点も尋ねた。

「N-ONE」に採用された電動パーキングブレーキのスイッチ(写真:本田技研工業)

「10月から11月の時点では、お客様が改良前の仕様と改良後の仕様が選べた。改良前のタイプは、装備が古いので値引きなどを増やした。改良後の仕様は納期が長く、12月上旬の契約では、納車されるのは2022年3月頃となる。今後も数カ月はN-BOXの販売低迷が続くだろう」

結果論ではあるが、N-BOXは改良を実施する時期が悪かった。半導体やハーネス(配線)などの欠品によって納期が遅延しているときに、改良に伴う生産の停滞まで加わったからだ。

また、ホンダは埼玉・狭山工場の閉鎖に伴って、「ヴェゼル」の生産を鈴鹿製作所に移した。鈴鹿製作所では以前からN-BOXをはじめとする軽自動車のNシリーズと、「フィット」や「シャトル」といったコンパクトカーの生産も行っている。

今は国内で新車として売られるホンダ車の50%以上が軽自動車だから、そこにフィットとシャトル、さらにヴェゼルまでが加わると、鈴鹿製作所は過密になってしまう。

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