パナソニック、「Technics」復活の舞台裏 中村-大坪時代の"誤り"を修正
そもそも、パナソニックは思い切った形でブランドの統一を果たしている。ナショナルという日本国内で圧倒的な強みを持つ白物家電のブランドを捨て、ヘアドライヤーから大型テレビまでをパナソニックブランドに統一し、買収した三洋電機が持っていた各種ブランドも廃止。松下電工のNAiSブランドまでサヨナラしてしまった。
過去の強引なブランド戦略に関しては、「中村邦夫会長・大坪文雄社長」の時代に行われたものであり、今の幹部がそれに対してコメントできるタイミングでもないだろう。しかし、なぜTechnicsを復活させるのか、という疑問には、パナソニック アプライアンス社 上席副社長 ホームエンターテインメント・ビューティー・リビング事業担当 兼 ホームエンターテインメント事業部長の楠見雄規氏が応えてくれた。
耳に訴える部分にプレミアム性がなかった
楠見氏は「人間には五感があり、五感それぞれに訴えかける心地よさを潜在的に求めるものだ」と話す。激しい国際競争の中で勝ち抜き、商品にプレミアムの価値を付与するには、人の感覚に訴える技術、ノウハウが不可欠ということだ。
「たとえば、3980円も出せば、十分な機能を持つヘアドライヤーを買うことができます。しかし、そこに”しっとりと仕上がる”という”気持ちよさ”の付加価値を付けると、2万円の定価でも売れる製品になる。これは料理器具などにもつながる部分ですよね。五感につながるあらゆる分野に関して、パナソニックは何らかの繋がりを持ち、それを商品のプレミアム性としてきました。しかし、”耳に訴える”部分に関しては持っていません(楠見氏)」
AV製品はもちろん、”心地よい音”は様々な商品において求められていく。今後の商品展開を考える中で、高音質を想起させるブランド名は必要不可欠だ。ところが、パナソニックには聴覚に対して”心地よさ”を提供する技術やノウハウがない。これではダメというわけだ。
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