70歳実質定年で差が開く、シニアの勝ち組・負け組 40代から意識せざるをえない「老後のリアル」

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これから70歳まで雇用を延長する場合、会社の選択肢は、①70歳までの定年引き上げ、②70歳までの再雇用制度の導入、③定年廃止、の3つに大きく分かれる。定年引き上げや定年廃止のハードルは高く、多くは再雇用制度を採用している。特に定年廃止は、YKKなどごく一部を除いてない。

雇用延長は正社員としての定年を過ぎた後だから、ほとんどは「嘱託」「契約社員」「アルバイト」などの肩書で残るのが通常。収入は定年時に比べ50%から75%程度の水準に下がり、仕事内容も簡単になるケースが多い。同じ部署で勤める場合、かつての部下が自分の上司となる逆転現象も、往々にして起こる。

特に大企業の社員はプライドも高く、定年後、いかにモチベーションを保つかは大きな課題だ。会社にそのまま残る以外にも、転職や起業・独立などの選択肢もある。高齢者専門の派遣会社である高齢社の村関不三夫社長は「『俺は部長だった』と言う人ほど会社は使いにくい」と説く。新たな職場に就いても、より謙虚な気持ちで仕事に臨むのが基本だろう。

次に狙われるのは”働かないおじさん”?

定年前でも、50代後半には役職定年があり、そこでガクッときてしまう人も少なくない。ましてDX(デジタルトランスフォーメーション)時代を迎え、リモートなどの新たな技術にうまく対応できない中高年が増えているのが実態だ。これ以上”働かないおじさん”を大量生産しないよう、会社自体も今、働く仕組みを大きく変えようとしている。

その1つがジョブ型雇用。これまでの「人」に仕事がつく日本流のメンバーシップ型雇用から、「仕事」に適した人材がつくよう発想を変えた雇用制度である。給与も年功序列ではなく、その職務(ジョブ)にいくらの値段がつくか、という基準で評価されることになる。すでに日立製作所や富士通、三菱ケミカルホールディングスなどが導入を表明した。

ジョブ型だけではない。同一賃金・同一労働などをはじめ、新たな働き方の採用で、これまでの「男性・生え抜き・正社員」が引き上げられる典型的な日本企業の姿は、もはや成り立つまい。思えば新浪社長の「45歳定年」発言も、シニアになって迷わないよう、40代でセカンドキャリアを構築し始めたほうがいいという、正直すぎる正論なのかもしれない。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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