一方、菅義偉首相退任による自民党の総選挙勝利への期待で、9月に一時大きく上昇した日米相対株価は、岸田文雄政権発足に前後して低下し、再び戦後最低水準付近で推移している。日本株(TOPIX)の年初来リターンは約13%(11月19日時点)と、2016年以降ずっとアメリカ株に劣後し続けている。
総選挙を終えた岸田政権は、11月19日に新たな経済対策(コロナ克服・新時代開拓のための経済対策)を閣議決定した。総額55兆7000億円規模の財政政策であるため、岸田首相は「真水56兆円、過去最大規模の対策」とインタビュー記事で述べている。真水という言葉の定義はあいまいであるが、仮に55兆7000億円、つまりGDPの10%相当の押し上げ効果があれば、GDP成長率は大きく跳ね上がる。
ただ、今回の経済対策が日本経済のGDPを押し上げる効果は、
経済対策の中で、子育て、低所得家計などへの所得支援分は約5兆円程度で、追加的な消費に回るのはせいぜい半分程度だろう。また、売り上げが落ち込んだ中小企業などへの事業支援金は約3兆円の予算規模となったが、事業を存続させるための資金支援の性格が強いので、これが経済成長率を押し上げる効果はわずかだろう。
くすぶり続ける金融所得課税の行方
そして、2022年度予備費、地方政府への臨時交付金などが10兆円規模で想定され、これが経済対策に入っているとみられるが、実際に支出されるかは今後の新型コロナの情勢次第である。
上記以外は、環境、経済安全保障関連の補助金支給や基金上積み、公共投資などが主たる予算であるが、追加的な政府消費や投資に回る部分はわずかとみられる。
このため、最大規模となる経済政策といっても、経済成長率を押し上げる効果は限られると推察される。こうした見方が大勢を占めていることが、大型の経済対策となっても日本株市場が反応しない理由の1つだろう。
もう1つの理由は、経済対策が大型化するのと同時並行で、金融所得課税などの増税を進める動きが一方でみられていることだろう。今回の経済対策は、GDPを大きく押し上げる効果はもともと大きくないとみられるが、増税が将来行われるならば家計や企業は支出を増やさないので、財政政策が成長率を高める効果は大きく低下する。
岸田政権の経済政策運営において、経済成長を軽視する方向性が今後強まれば、2022年も日本株のリターンはアメリカ株を上回るのは難しいだろう。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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