11月22日にFRB人事が発表されたあとに、アメリカの債券市場では1.5%台半ばにあった10年長期金利が、23日には一時1.7%に接近するまで上昇した。また、利上げ期待をより反映する短中期ゾーンの金利上昇が目立つ。最近のインフレ上昇を問題視するバイデン政権に任命されるにあたり、パウエル議長らが政治からの要請に応えて、早期利上げが実現するとの期待が一段と高まった格好である。
そして、アメリカの株式市場では、金利の大幅上昇を受けて、上昇していた主力IT株などが調整してナスダック指数が下落した一方で、金融株などダウ採用銘柄が上昇した。つまり、金融政策への思惑で、物色動向の大きな変化が見られた。その結果、変異株で影響を受ける前のS&P500指数の調整は限定的となった。
今のところ、株式市場は、FRBに対する政策運営への信認がパウエル、ブレイナード両氏の強力コンビによってより強まったと冷静に判断しているといえる。
FRBは11月3日のFOMCにおいてテーパリング(資産買い入れの縮小)開始を決定して、2022年半ばまでの時間をかけて量的緩和を徐々に修正させる方針を示した。その後に判明した10月消費者物価が前年比6%を超える伸びに上振れ、これを受けてバイデン政権がインフレへの懸念を表明するに至り、原油高への対応として戦略的な原油備蓄の放出が決まった。
パウエル、ブレイナード両氏の最重要政策は
FRBの中からも、11月19日にリチャード・クラリダ副議長がテーパリングのペースを早めることを検討する考えを示した。これは、2022年の利上げ時期を前倒しにする可能性とともに、インフレ抑制をより重視する政策姿勢へ大きく変える可能性を示す発言と位置づけられる。
ただ、クラリダ副議長の発言は問題提起であり、発表したばかりのテーパリングペースを変えるとの判断に早々に至る可能性は高くないと筆者は考えている。
もちろん、バイデン政権からの人事指名を受けて、パウエル、ブレイナード両氏ともにインフレ抑制の重要性に言及した。ただ、FRBが目標として課されている最大雇用の実現を、両氏は重視しており、これまでどおり2つの目標とのバランスを取りながら、政策判断するのは変わらないだろう。
インフレ率の大幅上昇が2022年も続けば、FRBはテーパリングを早く終えて利上げに転じることになる。債券市場が相当織り込んだ、早期利上げが実現するかどうかは、高インフレが続くか次第である。2022年にはインフレの落ち着きと経済成長率の減速が予想されるので、FRBの利上げ時期は後ずれすると筆者は予想している。
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