JR九州の客室乗務員は本当に不要なのか 10月から一部列車で車内販売を取りやめ
工業デザイナー・水戸岡鋭治氏が手掛けたこれらの車両は、確かに「一度は乗ってみたい」と思わせるだけの魅力がある。だが、乗った後に「もう一度乗りたい」という感動を与えるのは、客室乗務員の「おもてなし」だ。
サービス向上に一役
JR九州の客室乗務員は、航空会社のキャビンアテンダント(CA)を参考に設けられた。1987年の同社発足直後、博多─西鹿児島間を結ぶ在来線特急に導入され、現在は九州全域で250人が勤務する。
CAを参考にしただけあって、客室乗務員の役割は車内販売にとどまらない。観光列車であれば、沿線の観光案内や乗客に写真を撮ってあげたりもする。新幹線や特急列車の客室乗務員は、乗り換え案内や切符の確認、さらに終着駅で折り返しの時間が少ないときには清掃スタッフと一緒に車内の清掃も行う。
そして、車内販売をグループ会社に委託しているほかのJRと違い、JR九州では客室乗務員は本社採用(契約社員)である。「もし接客サービスをグループ会社に任せてしまったら、接客サービスはグループ会社の仕事だと本社の社員が誤解しかねない」(唐池氏)ためだ。つまり、客室乗務員の存在はJR九州全体の接客サービスの向上に一役買っているのである。
JR九州にとって、魅力的な車両と客室乗務員のおもてなしは車の両輪であり、どちらが欠けても成り立たない。ソニックやかもめのユニークな外観を見てわかるとおり、特急列車であっても単なる移動手段の枠組みを超え、乗客に感動を与えようとしていることは明らかだ。こうした列車に客室乗務員が乗っていないと、せっかくの道中が味気ないものになってしまう。
一方で、JR九州にとっても、観光列車と比べ格段に利用者の多い都市間特急における接客サービスは、客室乗務員の根幹ともいえる。ここが失われると、おもてなし全体が揺らぎかねない。
車内販売や客室乗務員の廃止は、部分的に行うのであれば鉄道事業の収益改善に寄与するだろう。だが、その行き過ぎは、かえってJR九州の持ち味をそぐことになりかねない。
(「週刊東洋経済」2014年9月20日号<9月16日発売>掲載の「核心リポート04」に加筆)
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