真・女神転生Ⅴ「傑作」が残した只1つの惜しい点 もっと「東京が舞台」という設定を活かせたはず

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ただ、残念な点もある。それはゲームエリアに東京の地名を使いながら、そこに実際の建物はあまりにも少ない。あっても、ビルや高速道路にコンテナ程度。その土地のランドマークがほとんど描写されていないのである。同じ文明崩壊後の都市描写という点では、核戦争後の近代文明が崩壊したボストンを舞台とした「Fallout4」が優れている。

同作のゲームエリアには、レッドソックスの本拠地であるフェンウェイ・パークを始めとして、所々にボストンのランドマークが設置されている。適度にランドマークを見せることで、核戦争後のボストンの街を実際に歩いているような没入感を与えることに成功している。

僕はボストンに行ったことはないけれども、たまにネットなどで写真を見かけると「ああ、ここ見たことある!」とつい思ってしまう。せっかく東京を舞台にしているなら、真・女神転生Ⅴにもそんなゲーム体験があってもいいのでは。

やはりユウラクチョウがあるなら、有楽町マリオンや交通会館の存在感は欠かせないし、アキハバラなら広い中央通りに総武線の高架がかかる景色が欲しい。東京タワーや国会議事堂はゲーム内でも表現されているので、他のエリアではもう少し、その土地らしさを再現しても良かったのではないだろうか。

ぬるいゲームに飽きた人ほどオススメ

最後に。真・女神転生Ⅴはストーリーも良いのだが、やはり戦闘と悪魔合体という独自のシステムが面白い。ザコ戦でもゲームオーバーの可能性のあるバトルが緊張感を持続させる。主人公だけではどうにもならない相手に、自分で育てた世界に一つだけの仲魔たちと共に挑む。

最近の親切すぎて歯ごたえを感じないゲームに食傷気味なRPG好きにこそ、ぜひプレイしてもらいたいゲームである。

赤木 智弘 フリーライター

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あかぎ ともひろ / Tomohiro Akagi

1975年栃木県生まれ。2007年にフリーターとして働きながら『論座』に「『丸山眞男』をひっぱたきたい――31歳、フリーター。希望は、戦争。」を執筆し、話題を呼ぶ。以後、貧困問題などをテーマに執筆。主な著書に『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』などがある。

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