2022年に株価を下げる「6頭の熊たち」に注意せよ 株価は目先上昇でも、徐々に黒い影が忍び寄る

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まず日米とも、企業収益の実態がよい。アメリカの調査会社であるファクトセットが集計した、アナリストによる先行き12カ月間(2021年12月~2022年11月)におけるEPS(1株当たり利益)予想の平均値で見ると、TOPIXベース(東証1部上場全企業)では前年比で45.3%増益が、S&P500ベースでは35.7%増益が、それぞれ見込まれている。

日本では輸出製造業の株式が、輸出(とくに半導体製造装置など)の増勢を受けて先行して買われた。製造業では、半導体や各種部品の供給不足から減産していた自動車産業で、生産量が回復しつつあるのも追い風だ。

日本の景況感は「異次元緩和後」と同じくらいよい?

一方、内需非製造業のいわゆるリオープン企業(コロナ禍による休業や営業時短などからの再開で恩恵を受ける、小売り、外食、旅行関連などの企業群)は、株価がいまひとつの感がある。これは、ドイツやオーストリアなど欧州諸国で新型コロナ感染が再燃していることもあって、日本でも「第6波」を警戒する心理が強いのかもしれない。

しかし、内需を中心とした市井の景況感を示す景気ウォッチャー指数は、現状判断DI、先行き判断DIともに、アベノミクスや異次元の緩和を受けて業況が改善した2013年末~2014年初あたりの水準まで、戻っている。新幹線や空港が混んでいる、高速道路が渋滞だ、観光地の人気の飲食店に観光ガイドを携えた人たちが行列をつくっている、などのエピソードも多く耳目にするようになった。

岸田文雄内閣が先週末に打ち出した経済対策は、金額自体は巨額であるものの、企業・産業の成長を促進しようといった面が乏しく、企業や家計に現金を渡しても、先行きの見通しが立ちにくい中、多くが貯蓄(借入金の返済を含む)に回るだろう、といった指摘が多い。

確かにそのとおりだと考える。それでも、経済対策を打つことが株価を大きく押し下げるとは見込みにくく、家計に渡した現金が1円も使われないわけではなかろうから、ちょっぴり株価を支える要因にはなるだろう(経済対策で株価が爆騰、ということはないだろう)。

アメリカでも、ジョー・バイデン大統領が4月の施政方針演説で打ち出した4兆ドルの経済対策は、野党・共和党からだけではなく、与党・民主党内でも異論が寄せられ、議会審議にかなりの時間がかかってきた。最終的に経済対策は2つに分割され、そのうち1兆ドルにのぼるインフラ投資計画は11月5日にようやく議会で可決され、15日に大統領が署名して法として発効した。

残りの部分(Build back better法案と呼ばれる)は1.75兆ドルに減額されて、なんとか議会審議の進展にメドがつき、下院では19日に可決された。まだ上院での審議を残していて予断は許さない(上院で別個の案に修正して可決し、それを下院で再可決する必要が生じる場合もある)ものの、種々の経済対策がようやく動き始める、との期待が広がりうる。

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