2022年に株価を下げる「6頭の熊たち」に注意せよ 株価は目先上昇でも、徐々に黒い影が忍び寄る

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下落相場への「備え」の話が先行してしまったが、ではなぜ筆者は「来年主要国の株価が下振れする」と考えているのか。

来年の「6頭の熊たち」に注意せよ

これは、来年に多くの「熊」(株価下落要因)が現れると見込んでいるためだ。ただし、熊が団体で現われるにはまだ少し時間があるので、個々に詳しく解説するのは先のこととさせていただき、今回は「6頭の熊たち」をざっと列挙するにとどめて終わりとしよう。

(1) アメリカにおけるテーパリング(量的緩和の縮小)が進展し、大幅な金融緩和を前提としてきた企業や投資家の行動が逆回転する。投資家の信用買いが減退し、株価の勢いが減じられる。リスクの高い社債の購入も手控えられる。アメリカの企業は社債などで借り入れた資金を自己株買いに充ててきたため、やはり株価を圧迫する。

(2) アメリカの量的緩和の拡大スピードが落ちることが、新興国の政府や企業の資金調達を困難にする。並行して、新興国通貨の対ドルでの相場下落に歯止めをかけるため、景気を犠牲にして利上げを行わざるをえなくなる。それが一段と新興国経済を引き締め、新興国通貨相場を押し下げる、といった悪循環に陥る。

(3) 中国に関する多数のリスクが懸念される。景気が減速しており、加えて「共同富裕」を掲げての突然の産業規制が、世界の投資家の中国からの資金逃避を増加させる。米中の安全保障や人権問題をめぐる対立が先鋭化。中国の民間非金融部門の債務残高は対名目GDP比で2.21倍と、リーマン・ショック前のアメリカのピーク(1.49倍)を上回る。

(4) 日米欧などのマクロ経済指標や企業収益は増勢を維持しているが、伸びは鈍化している。

(5)アメリカのクリスマス商戦は前倒しで進められているため、11月分あたりまでの小売り売り上げは好調だろうが、トラック運輸、海運、港湾などの人手不足が品不足を招き、12月分以降は失速に向かう。

(6)ポーランドとハンガリーがEU(欧州連合)との対立を先鋭化しており、4月のフランス大統領選の結果に対する不透明感もあって、EUの求心力に疑念が生じうる。ロシアによるウクライナ侵攻の懸念もある。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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