ろくでもない政治家を見抜く為に欠かせない視点 大胆に妥協できるか、全てに意見を通そうとするか

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選挙では、特定の集団の利益を代表していると正直に述べている政治家を選んだほうが、民主政治を強化することになると思う。

国民全体に受けのいいことだけを言っている政治家は、自分の利益だけを追求しているろくでもない人と見るべきだ。

揺らがぬ信条を持っている政治家は妥協の仕方もうまい

キケロは、政治家は柔軟でなくてはならないと考える。頑固な姿勢を取る政治家は無責任であると彼は考えている。

状況がたえず進展し、善き人々の考え方が変わっているときに、頑なに自分の立場を変えないというのは、政治においては無責任なことである。
どんな代償を払ってでも1つの意見に固執することが美徳だなどとは、大政治家はけっして考えない。航海中に嵐が来たら、船が港に着けない以上は追い風を受けて航行するのが最善策となる。
針路を変えれば安全を確保できるのに、方向転換をしながら最終的に母港を目指すのではなく、もとのコースをそのまま突き進むなど馬鹿だけがすることだろう。
それと同じで賢明な政治家は、何度も言うようだが、自国の名誉ある平和を最終的な目標とするべきだ。言葉は一貫していなくても良いが、目指すところは一定でなければならない。(書籍内82~83ページ)
『2000年前からローマの哲人は知っていた 政治家を選ぶ方法』(文響社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

キケロは政治を航海にたとえる。キケロの時代は、蒸気機関や内燃機関を動力とする船はなかった。したがって、航海においては風の流れをよく読むことが重要になる。

目的地がわかっているから、さまざまな迂回路を取ることができるのだ。政治もこれと同じだ。

自分にとって絶対に譲れない原理原則のある政治家は、それ以外の事項について大胆に妥協することができるのである。

逆にすべての問題で自分の意見を通そうとする政治家は、他人と折り合いをつけることができないので、自分の意見をまったく実現できないような事態になることが多いのである。政治とは、妥協の技法でもある。

前回:日本とドイツ「移民」の違いで生じた決定的な差(11月28日配信)

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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