多分、1回目で相手が全問正解者なら迷わず③(今まで通り二等分での報酬を受け取る)を選んだことでしょう。言い方を変えれば、④(自分の正解した分だけの報酬に切り替えることができるが、1問当たりの報酬は3分の2とする)を選ぶ理由は、「たった1問しか答えられない人とは組みたくない」という不快感情なのです。
そんな不快な感情を与えられるくらいなら、減額されたほうがまだマシというわけです。つまり、④選択者は「損得勘定ではなく損得感情で動く」気質があると考えられます。金銭的には損をしていますが、感情的にはむしろ得しているという理屈になります。
実際、多くの人は無意識に、「自分が損をしてでも気に入らない人間を得させたくない」という損得感情で行動をしています。これは、経済学者西條辰義氏をはじめとする世界の多くの研究者が実験によって導き出した「スパイト(いじわる)行動」というものです。ただし、配偶関係別に比較調査したものは、おそらく私がはじめてではないでしょうか。
もちろん、この調査だけをもって、既婚より未婚のほうがスパイト行動率が高く、その中でも40代未婚女性が最も高いと結論づけられるものではありませんが、④を選択した人の性格特性をクロス集計すると興味深い結果も出ました。
2人の合計正解数をあげる過程を喜ぶことが結婚
③と比べて④の選択者は、自己有能感が高く、仕事は能力主義を好み、何か困りごとがあってもまずは自分でなんとかしようとする傾向が強い「人に頼らない人間」でもありました。これはいわゆるソロ耐性度とも一致します。
400万円以上稼ぐ女性の生涯未婚率が高いのは、単に相手の年収を期待するというだけではなく、年収400万円も稼げない男性と結婚するくらいなら(=クイズに1問しか答えられない相手なら)、結婚せずに自分ひとりで生きたほうが損得感情的にプラスだという意識ともいえるでしょう。
しかし、そもそも結婚とは赤の他人同士が共同生活をするものであり、相手の行動は不確実性の高いものです。自分の思いどおりにはいきません。自分の感情を満足させるために相手を損させたいという気持ちでは到底やっていけません。
互いの成功や失敗も受け入れながら、自分の正解数ではなく2人の合計正解数をあげていく過程を喜ぶことが結婚なのではないでしょうか。
損得勘定も損得感情も誰しも内包しているものです。損得勘定だけですべてを合理的に判断する生き方も世知辛いものですが、損得感情だけに左右されてしまうと、気付くとそれは「孤立」という状態に陥る恐れがあります。結婚相手の選択に限らず、スパイト行動を頻発する人は、結果的に自分の人生に意地悪をしているようなものかもしれません。
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