リニアの強敵?「ハイパーループ」実現への着地点 音速長距離走行は無理筋、都市内移動が適切か

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真空チューブ内に高速車両を走らせるハイパーループのアイデアは以前からあったが、2013年にテスラやスペースXのイーロン・マスク氏がアメリカのロサンゼルス―サンフランシスコ間をハイパーループで結ぶという構想を発表し大きな話題になった。現在、世界各国で多くの企業がこの事業に参入し、研究・開発でしのぎを削る。

リチャード・ブランソン氏率いるヴァージングループはその筆頭だ。同社は航空、鉄道、海運、さらに宇宙といったあらゆる交通分野に進出しており、ハイパーループもその流れの延長線上にある。同事業を行うヴァージンハイパーループはラスベガス郊外に建設した全長500mの実験線で2020年11月に有人試験を行った。今年10月からはドバイ万博の会場に全長10mの実物大のポッドのレプリカを展示している。

ヴァージンのハイパーループ計画にはフランス国鉄、ドイツ鉄道などの鉄道会社のほか、GEなどのメーカー、KPMG、マッキンゼーなどのコンサルティング会社がパートナーとして名を連ねる。また、ドバイの港湾オペレーター、DPワールドが出資しており、資金面でも盤石の体制を整える。

日立も技術面で協力

ヴァージンと並んで名前が挙げられるのが、ハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジー(HTT)。フランスのトゥールーズに実験設備を持つほか、2018年に中国内陸部で実証実験を行うと発表し、地元政府と合弁会社を設立した。

2020年12月には日立製作所がHTTのパートナーに名乗りを挙げ、HTTに出資すると同時に技術面での協力も行っている。「信号システムや車両制御の面で貢献したい」と日立の広報担当者は話す。もっとも、ハイパーループの将来性に大きな期待を寄せつつも、「ハイパーループの技術開発を通じて得られた知見を、既存の高速鉄道に活用したい」という。将来だけでなく、もっと身近なところでも投資の果実を得たいということだ。なお、シーメンスもHTTのパートナー企業の1社だ。

2016年の国際鉄道技術見本市(イノトランス)に出展したトランスポッドのチューブ(記者撮影)

ハイパーループの技術開発に取り組む事業者はほかにもある。オランダのスタートアップ企業、ハードは今年10月、EUから1500万ユーロの資金援助を得ることに成功して話題となった。また、カナダのトランスポッドは2020年8月にアルバータ州政府と同州におけるハイパーループ開発に関する基本合意を締結した。韓国鉄道技術研究院は2020年11月にハイパーループを17分の1サイズに縮小して造った実験装置で時速1000km超の走行に成功している。

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