瀬戸内寂聴さんが語っていた不安な時代の生き方 「今日の問題は今日にでも解決しないといけない」

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今日の問題は今日にでも解決しないといけないのに、面倒くさいとか怖いとかで先送りにする。やらなければいけないことは、とにかく早くしたほうがよい。ウミは早く出したほうがよいんです。

――これは日本社会や日本人の特色なんでしょうか。

要するに、決断力がないんです。

まだ日本社会は何といっても男社会ですよ。女性がそうとう強くなっているけど現状はまだ男社会。男性に決断力がないということは、男が男らしくなくなったということです。

それと、決断するのはその場の「長」ですよね。役がついた人ですよ。決断しないといけない人たちが決断しないということは、責任感がなくなったということです。嫌なことは他人にしてもらって、よいことは自分の手柄にしたいなんてやっぱりダメです。

人の上に立つ者は、それだけの苦労はしないといけない。逆にそれができるのが、人の上に立つ人です。部下の失敗も、長が負わなければいけない。それは当たり前のこと。そのために部下より高い月給もらっているんですから。

一触即発の危険な状況

――一時、週刊誌で小泉首相を評価されていましたが、今現在の小泉さんを、責任感という面ではどうご覧になっていますか。

せとうち・じゃくちょう/1922年、徳島県生まれ。東京女子大学国語専攻学部卒。1957年、『女子大生・曲愛玲』で新潮社同人雑誌賞受賞。1973年11月平泉中尊寺で得度。法名、寂聴。京都嵯峨野に寂庵を結ぶ。1987年天台寺住職に就任。小説、随筆など幅広く執筆した。写真は2003年撮影(撮影:梅谷秀司)

責任感はあるのかもしれないですが、われわれの目には訴えてきません。

発言することやゼスチュアはとてもりりしいですが、いろんなことを先送りしたり丸投げしたりしている。やはり公言したことは守って実行してくれないと困りますね。

それと、柔軟な判断力がないと、政治家の長にはなれません。私はどうして世界中が嫌がっている、靖国神社参拝問題にあんなにこだわるのかよくわかりません。頑固は老人の特徴です。あの人はまだ若いのに。

――日本ではイラク、北朝鮮問題にしても、勧善懲悪の世界で、報道していますが、瀬戸内さんはつねに想像力の大切さを訴えていますね。

私はマスコミの報道をあまり信じていません。私は湾岸戦争のときに、反戦の断食をしてイラクに行っています。この目で見て、いかに報道がうそかということがわかりました。

われわれが受けている報道は、多国籍軍側の報道です。イラクの国民が受けている報道は、昔の日本の大本営発表と同様の、フセイン側だけの報道でした。両方見ないと判断できない。

とにかく戦争はいけません。どんな美辞麗句をつけても、戦争は集団人殺しです。そして、本当に被害を被るのは、非戦闘員である老人や子供です。ですから、戦争は絶対反対。私はブッシュ大統領は嫌いです。彼は好戦的ですから。

――今の世の中の空気は、戦前と似ているといえませんか。

私の記憶によれば、昭和17、18年の、すべてが戦争に向いている状況に似ています。当時、「一触即発」という言葉がはやりました。今もまさに一触即発の危険な状況ですよね。

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