瀬戸内寂聴さんが語っていた不安な時代の生き方 「今日の問題は今日にでも解決しないといけない」

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人間は、生まれたときに沢山の可能性をもらっているのに、人生でそれを使えるのはほんのチョット。大方は使わずじまいで死んでいく。だからいつでもあきらめないで可能性を追求していくことが大事。

本当の才能は、若いときに出るものですが、年齢にとらわれずに、出てくる才能もあります。

誰かを好きになると、優しくなれる

――宇野千代さんの言葉で「長生きすると、苦しみが少なくて死ねる」とありますが、こういうことを考えると長生きしてやろうって勇気が湧いてきますね。

「今を完全燃焼して生きるしかない」と語った。写真は2003年撮影(撮影:梅谷秀司)

あのときこうしていればよかったと考えても仕方がない。選択してしまったものにクヨクヨしない。どんなに大きな銀行でも潰れるじゃないですか。今を完全燃焼して生きるしかないですよね。

年をとって恋愛をするのも、私はいいと思いますよ。「老いらくの恋」なんてありますけど、誰かを好きになると、優しくなれる。

だから、若い人は年をとった人に「いいかげんにしなさい」と言うべきではないです。たとえば、おじいちゃんが恋愛したら、「よかったね」と言って祝福してあげればいい。

――出家をして他人に対する見方も変わりましたか。

たとえば、「戒律」ってありますよね。「ものを盗むな」なんてわかっていても、私は他人の亭主を盗んでいますよ(笑)。これも盗んでいることでしょ。「うそをつくな」といっても私は小説家ですから、うそをいかにほんとらしく書くかが小説家なので、一日もうそをつかない日はないです(笑)。守れないことが多い。私は戒律一つ守れないのかなと思いますね。

出家して、戒律一つ守れない自分を自覚して、つくづく自分はダメ人間だと思いました。そうすると他人を責める気がなくなります。他人が少々気に入らないことをしても、怒ることができなくなり、許すことができるようになりました。

これはやはりありがたいと思っています。

【聞き手:川島睦保(週刊東洋経済編集長)、田北浩章(週刊東洋経済副編集長)、構成:伊藤奈緒美】 ※肩書はインタビュー当時
週刊東洋経済編集部
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