「中国規格」でラオス直結、国際鉄道は成功するか 発展招くか、「人民元経済」に取り込まれるか
「一帯一路」を旗印に各国でインフラ開発を進める中国だが、中国ラオス鉄道についても「ラオス側への債務が過大になっていないか」と心配する声も大きい。建設費は中国とラオスが70%・30%の割合で負担する形となっているが、今後の旅客・貨物収入で賄うことができるかどうかが課題となりそうだ。
ラオスの産業構造からして、人々は地元での農林業や観光業などを軸に生業を立ててきただけあって、長距離移動の需要は高くない。鉄道の運賃水準にもよるが、既存の長距離バスが低廉なこともあり、鉄道が「ラオス国民の足」としてどこまで浸透するかは未知数といえよう。
また、ラオスは水力発電所の建設でも中国の支援を受けているが、目下のところ中国への対外債務は国内総生産(GDP)の45%に達しており、債務返済による重負担が目に見えている。これまでも中国の融資を受けた途上国が返済困難となり、完成したインフラ施設を中国に明け渡すという「債務の罠」に陥る例が少なからずみられる。ラオスもそうした例になりはしないかという懸念もある。
観光客殺到の恐れも
さらに心配すべき問題として、ラオス各地への「オーバーツーリズム」がある。ラオスはこれまで「交通が不便」「行きにくい」という事情もあって、古くからの文化や環境が守られてきた。
とくに、ユネスコの世界文化遺産に登録されているルアンパバーンは「アジア最後の桃源郷」ともいわれる古都だが、ここにも中国ラオス鉄道が乗り入れることになる。
ワットシェントーンをはじめとする小乗仏教の寺院が立ち並ぶこの街では、今でも早朝には僧侶の托鉢の様子がみられる。
【2021年11月16日6時35分 追記】記事初出時、寺院についての記述に誤りがあったため上記のように修正しました。
フランス植民地だった歴史から、街には本格的なフランス料理レストランやカフェも集まっており、欧州の旅行者の間で「秘境ながらグルメの街」として知られてきた。ここへ中国からの観光客が鉄道を使って大量に押し寄せてくるとなると、果たしてどんなことが起こるだろうか。
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