「売れない52歳芸人」が仕事ほぼゼロでも食える訳 「コラアゲンはいごうまん」という生き方

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コラアゲンはいごうまんさん(写真:梅谷秀司)

2020年、1回目の緊急事態宣言を受けて、5月から予定していたツアーはすべて中止にせざるをえなかった。「お金が入らないと困るだろうから、うちだけでもやろう」と言ってくれた主催者もいたが、悩んだ末に辞退した。コラアゲンさんのライブの特性上、仕方のない判断だった。

「主催者がプロのイベンターであれば、中止すると向こうも死活問題やから、感染対策を徹底したうえで決行する、という選択肢もあります。けれど僕のライブの主催者は、ほとんどが一般人で、お金もいっさい受け取らず、善意だけでやってくださる。もし感染者が出てしまったら、地元の方がどのような感情を持つかわからへん。ライブをする必要のない方に、そんな責任を背負わせてまで、やりますとは言えませんでした」

収入の7割が、一気になくなった。しかもギャラは、ライブ終了後に現金でもらっていたため、すぐに手に入るはずの収入が消えたということだ。コラアゲンさんは妻帯者でもある。生活は大丈夫だったのか尋ねると、思いのほかあっさりと「何とか暮らせています」と話した。

生活や企画を支えた人々からの支援

「うちは奥さんも働いていますし、子どももいません。僕は自分の生活費だけ稼げばいい、ってことになっているんです。趣味もない、酒も飲まへん、ギャンブルもせえへんから、月に10万円もあれば生活できる。多少やけど蓄えもあったし、『アートにエールを!東京プロジェクト』という文化活動への支援や、時折入る単発での仕事もありましたから」

さらに大きかったのは、ライブを楽しみにしていた全国の人々からの支援だったという。困っているだろうと、お米や缶詰などの食料や、マスクや消毒液などが続々と届いた。なんと、現金10万円を送ってくれた方もいた。

オンラインライブを企画し、機械音痴のコラアゲンさんに代わって、何から何まで手配してくれた方もいた。もちろんボランティアである。そのライブは大盛況で、そこそこの収入にもなった。これも全国ツアーを続けてきたおかげです、とコラアゲンさんは言う。

「僕のようにテレビに出ていない芸人は、ライブができないと生きていけへんだろうと、皆さん思ってくれたのでしょうね。今まで出会ってきた人たちが、命を救ってくれはったんです。はっきり言って、国の支援よりよっぽど早かったし、心もこもっていました」

テレビ画面越しや、大ホールで遠巻きに見るタレントと違い、コラアゲンさんは小さな会場で芸を披露することが多い。そのため観客との距離が近く、ライブ後も気さくに交流している。会いに行けるアイドルどころか、「友達になれる芸人」と言っても過言ではないほど。そういったスタイルも、コラアゲンさんの人柄を含め、応援してくれる人たちとの強いつながりを生んでいるのだろう。

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