欧州原子核機構、実は「自動化」の優等生 <動画>世界最大の加速器を支えるITパワー

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CERNで働く数千人の科学者もしくはスタッフの一部に問題が起こったり、要請が生じたりした場合、その全てがサービスデスクに届けられ、待機しているチームが問い合わせに回答し、また問題解決のための案内をする。これら全てが、組織のリソースを最も有効に活用する試みの一部である。

CERNで研究するスダーシャン・パラメスヴァラン氏は言う。「ユーザーアカウントに問題が起こった時に何回かサポートデスクを利用しましたが、いつでも即座に対応してくれて、問題を解決してくれました」。

CERNで働く物理学者デスピナ・ハーツィフォティアドゥ氏は「今では全てが集約されて、とても便利です。問題が起こった時にコンタクト先や電話番号を探さなくてもいいので、確実に時間の節約になっています」と満足げだ。

サービスデスクの設立にあたり、CERNは企業サービスマネジメントの提供で知られる企業、サービスナウ社に指南を仰いだ。

「CERNは完全に自動化されたシステムを構築した」とサービスナウ社のCEO (最高経営責任者)、フランク・スロットマン氏は説明する。

「あるリクエストが発生すると、一連の自動化された業務フローを通じて処理され、それからシステムに記録され、保存されます。私たちのほとんどに馴染みのあるコミュニケーションプロセスとは対極をなす、完全に自動化されたプロセスです。しかし、企業にとっては、これは比較的新しいものに属します。要するに、サービスのニーズや非常に単純な事柄の解決を、属人的なやりとりに頼りすぎている企業がまだまだ多いということです」

宇宙の解明に少しでも時間を割けるように

CERNはこうした全てを網羅する形のヘルプデスクを早期に採用し、今となっては大企業にそのノウハウを教える立場にある。

これまでに、フォルクスワーゲンを含む一流の自動車メーカーが視察のためCERNを訪れてきた。CERNのサービスマネジャー、マーテンス氏は言う。「多くの人たちが、会社のマネジメントにこうしたやり方が上手くいくことを確信させるため、ここを視察に訪れます。物理学研究所にのみ応用可能なものではなく、あらゆる営利もしくは非営利組織に応用しうるものなのです」。

つまり、科学者たちにとっては、電球の交換を頼むために手を煩わすより、宇宙の起源の解明のためにもっと時間が割けるということである。

ナレーションは英語です(音量にご注意ください)
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