山口FG、改革派トップ「解任」に伴う1つの副作用 臨時株主総会で是非を問う異例の事態に発展

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とはいえ、吉村氏は法を犯したわけではない。調査報告書は吉村氏が新銀行に関して行った合意は口頭だったとしている。一方、「取締役会が議論に上げるべきと言ったら、上げないといけない。(構想を進めるのは)CEOの権限だと主張したのは大きな認識の誤りだ」(椋梨社長)として、取締役として不適切であると判断した。

山口FGの椋梨社長は「戦略は組織で考えてきた」と強調した(写真:山口フィナンシャルグループ)

調査報告の中では、吉村氏が何度も「辞任を口にしていた」としており、それも取締役に適切でない要素の1つに挙げられている。その本人が辞任勧告を受け入れていない理由は不明だ。元会長CEOのクビ切りに発展した事態を受けて、他の地方銀行からは「吉村さんなしでやっていけるのか」(幹部)という声も上がる。

これに対し、椋梨社長は「これまで吉村氏にスポットを当てるPRをしてきたが、戦略は組織で考えてきた」「私自身、(改革派の吉村氏に対し)守旧派と言われることには不満を持っている。新事業はむしろ私が回していた。戦略がスピードダウンして保守的になることはない」と強調する。

新銀行の検討を中止する意味

今回の一件で、新銀行の検討は中止されることになった。全国に出ていくという狙いが、「地域価値向上会社」を目指す山口FGの方針とそぐわないからだという。

だが、昨今の地銀では新銀行の設立が増えている。ふくおかFGはネット専業の「みんなの銀行」を設立したほか、東京きらぼしFGでも「きらぼしデジタルバンク」の設立準備を進めている。

こうした戦略は地元にとどまるのではなく、全国に展開することで顧客を拡大する狙いがある。非対面取引を活用し、若い顧客層を開拓するという意味では、効果的な戦略ともなりうる。

今回の騒動は山口FG側から見れば「ガバナンスが適切に機能した結果」(椋梨社長)だが、新たなビジネスの可能性が閉ざされるという副作用もある。先駆的な取り組みを行う“お手本”の1つとされた地銀でこうした事態が起きたのは皮肉だ。

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藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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