山口FG、改革派トップ「解任」に伴う1つの副作用 臨時株主総会で是非を問う異例の事態に発展
株主の不安は大きいだろう。長らくトップを務めてきたCEO(最高経営責任者)が6月の株主総会の直後に降格となり、取締役すら「解任」されようとしているのだから。
「自らの辞任をお待ちしていたが、残念ながらいまだ申し入れは受けていない」。11月2日、山口フィナンシャルグループ(FG)の椋梨敬介社長は東洋経済のインタビューに対し、そう語った。
椋梨氏が待っていたのは、吉村猛前会長兼CEOに対する辞任勧告の返事だ。吉村氏は6月25日に開催された株主総会で取締役に承認された直後、ガバナンス上の問題があったとして、会長兼CEOから突如降ろされ、ヒラの取締役となっていた。
その後、調査委員会の調査を経て、10月14日に取締役の辞任勧告を出したが、辞任には至らず、12月24日の臨時株主総会で解任議案が出されるという異例の事態に発展している。
独断専行の姿勢を問題視
山口FGは地銀業界の中でも目立つ存在だ。低金利から貸し出しを主体とする銀行業務が儲からない中、地域商社から農業法人に至るまで、いち早く会社を立ち上げて新たな取り組みを進めてきたからだ。金融庁の幹部も「地銀のビジネスモデル改革のお手本」と称賛するほどだった。
吉村氏はこうした改革を中心で進めてきた人物だ(2020年に東洋経済が行ったインタビューはこちら)。そんな人物がなぜ、急に解任されるのか。
山口FGが問題視するのは「新銀行構想」にある。吉村氏は消費者金融大手のアイフルと提携して、新銀行の設立を目論んでいた。コンサル会社の元役員をトップに招き、全国区のリテール銀行を目指していたという。
ところが、この構想を進めるに当たり、取締役会での具体的な議論を経ておらず、椋梨社長は「(吉村氏が)独断専行の姿勢を崩さなかった」と話す。山口FGによると、経営陣が新銀行構想を問題視しはじめたのは5月下旬。その後のやり取りの中で「取締役会の中で不信感が高まり、CEOとして適任ではないと判断した」(椋梨社長)。
この時点で取締役から外すという判断には至らなかったが、CEO権限で新銀行構想が進むことを阻止するため、6月25日の株主総会後に吉村氏の降格を決めたというのが山口FGの言い分だ。
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