人類初サイボーグが告白「私がこの本を書けた訳」 「ネオ・ヒューマン」著者独占インタビュー:中編

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

でも、それでまったくかまわないのです。AIのおかげで、私が本物より賢く見えたり、面白い人間になったり、単純に記憶力がよくなったとしても、私としてはまったく抵抗がありません。研究仲間にも、繰り返しそう伝えています。

2つめのブレークスルーは、私が使っている改造車椅子にできることが、今よりもっと増えるだろうということです。

ロボティックモビリティとは、つまるところAIによって移動の可能性を広げようという試みです。

例えばこんなシーンを想像してください。車椅子を搭載できるように改造したわが家の自家用車(名付けてWAV=車椅子対応カー)で外出しているとき、私は目くばせで「ベッドルーム」のアイコンをクリックします。それだけで、WAVを降りてから寝室のベッドにたどり着くまでのすべてを、車椅子が自動で処理してくれるようになるのです。

また、車椅子に搭載された高度な衝突回避システムのおかげで、見知らぬ土地にいるときでも、自由自在に動き回れるようになるでしょう。障害物コースで全速力を出したり、花瓶などの割れ物がずらりと並んだショールームを何事もなく通り抜けたりすることもできるようになるはずです。

以上の課題をクリアできれば、バーチャルリアリティやロボットスーツ、ブレイン・コンピューター・インターフェース(人間の脳を外部機器をつなげるシステム)といった、世の中を大きく変えるようなブレークスルーがそのあとに続くでしょう。しかし、それですらほんの始まりにすぎません。そこが肝心なところです。

私がとことん楽観的でいられる最大の理由は、コンピューターの能力が指数関数的に向上しているおかげで、テクノロジーは進化する一方だということを知っているからです。

2年間生き延びるごとに、私が人生を楽しむための能力は、テクノロジーの力で倍になります。2040年には、今の1000倍の能力を身につけていることになるわけです!

どのようなアプローチがあるにせよ、いまや「人間」であることの定義は永遠に書き換えられようとしています。私の望みは、人類がどれほど遠くまで行けるのかを見守ることです。そのために、まったく未知の領域のど真ん中に自分の特等席を用意しようとしているのです。

これほどクールな計画は、そうないのではないでしょうか?

「サイボーグが本を執筆する」とはどういうことか

――あなたは、ただのピーターから「ピーター2.0」に変身するどの時点で『NEO HUMAN』を執筆したのですか? また、執筆はどのように行われたのでしょうか?

本を出したことのある人なら誰でも知っているでしょうが、作業の大部分は「書く」ことよりも「書き直す」ことに費やされるものです。私の本の場合もそうでした。

最終的には、執筆作業の半分を「ただのピーター」として過ごし、残りの半分は「ピーター2.0」として過ごしたことになります。

「ただのピーター」といっても、本格的に執筆を始めた2019年の初めには、すでにもとの私ではありませんでした。10歳そこそこからキーボードのタイピングに慣れ親しんでいた私の指は、もはやスペースキーを操作することさえままならなくなっていたのです。

次ページ「視線認証→テキスト化→合成音声→聞き書き」という手間
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事