人類初サイボーグが告白「私がこの本を書けた訳」 「ネオ・ヒューマン」著者独占インタビュー:中編

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ALSの問題を解決することは、多発性硬化症、脳卒中、脊髄損傷など、神経疾患全般の課題を解決することにつながります。さらに、老化による身体機能の低下に対処することもできます。

身体的な制約のせいで、自由な思考の赴くままに行動することができないと悩んだことのあるすべての人々を解放することができるでしょう。自らの知性を増幅する装置を移植してみたいという人々の夢を叶えることもできます。

ALSの問題を解決すれば、ゆくゆくは何十億もの人々の課題を解決できるかもしれないのです。

率直に言って、この研究の恩恵を受けるのが私だけならば、私は今回のプロジェクトを完全なる失敗と見なすでしょう。古くから科学者は、自らの体を実験台にして科学の発展に貢献してきました。私もまた、そのひとりです。ただし私の場合、これは文字どおり「人生をかけた」実験です。

これからの時代には、目を見張るような先端テクノロジーが登場するでしょう。それと並行して外科医療も飛躍的に進化し、AIやロボットの進化の恩恵を受けられるように私を長生きさせてくれるはずです。

もう1つ、面白いことを指摘しておきましょう。このプロジェクトについて私がとりわけ気に入っているのは、私が受けた一連の画期的な手術が、アメリカの医療機関でも、私立の医療機関でも、ロンドンの大病院ですらなく、すべて地元トーベイの公立病院で行われたということです。

それが実現したのは、有志の反乱同盟軍が、現体制や既得権益者、世の中の変わらぬ常識といったものに対して、こぞって反旗を翻すことを選んだからです。

その結果、いまやALS(医学の教科書では「致死的」と分類されています)が本当に私を殺すことになるのかどうかは、きわめて不透明になってきました。私を殺すのは、ALSではなく心臓病かもしれません。あるいはがんかもしれないのです。

これは、まったく新しい形の「末期症状」と言えるのではないでしょうか。

サイボーグになって「人生観」は変わったか

――「ピーター2.0」になってから、あなたにとって世界の捉え方や、人間であるということの定義はどのように変わりましたか?

非常に重要な質問だと思うので、しっかりお答えしていきたいと思います。

ピーター2.0になったことをきっかけに、これまでずっと、漠然と考えていたことがようやく形になったように感じています。

何よりも大きかったのは、今置かれた状況がどれほど暗く絶望的に見えたとしても、あるいは念入りに計画した人生という名のパレードが、運命という大雨によって台無しにされたとしても、自らが光を放つことで、人は大雨の中に虹をつくりだせるのだと知ったことです。

絶望するか、虹をつくりだすか。それはあくまで選択の問題です。

ほかにも、人間にとっての「暗黙のルール」が、いくつも明らかになりました。

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