環境問題が後押し、欧州「2大国際列車」の合併計画

ユーロスターとタリス、コロナ禍鎮静で再始動

合併によって情報システムや物流システム、車両の管理が統合され、運営コストの削減が可能となる。ただし、タリス用の車両は英仏海峡トンネルの厳しい安全・運用基準を満たしておらず、トンネルを通過する英国方面の列車で運用できないため、車両は従来通りそれぞれ用意することになる。

2019年の計画発表時、フランス国鉄社長兼CEO(当時)のギヨーム・ペピ(Guillaume Pepy)氏は「気候変動の問題と環境に配慮した旅行への要求は、野心的な対応を必要としている。ユーロスターとタリス、それぞれの持つ強みを結集することは、この課題に対する強力な回答となる。統合された新しい高速鉄道会社が誕生することで、より多くのお客様に対して道路交通や航空機に代わる魅力的な選択肢を提供し、高速鉄道サービスの発展に新時代の到来を告げるものとなるはずだ」と述べた。

また、ベルギー国鉄CEOでタリスの会長も務めるソフィー・デュトゥドワ(Sophie Dutordoir)氏は、「タリスとユーロスターが手を組むには今が適切なタイミングであり、すべての旅行者にとって有益である。鉄道に関する専門知識と、それぞれの安定した株主同士を結びつけることができる。ブリュッセルはさまざまな路線のハブとして、このプロジェクトの中心的な役割を果たし、運行するすべての都市との間を結ぶことになるだろう」と語った。

環境問題が追い風だったが…

両社の合併は環境問題を追い風に競争力を強化し、鉄道の優位性をさらに高めるというポジティブな考えに基づいており、2020年4月には完了する計画だった。

フランス・ベルギー・オランダ・ドイツの4カ国を走る高速列車「タリス」。この車両はドイツに乗り入れ可能なタイプだ(筆者撮影)

しかし、まもなく世界中を震撼させたコロナ禍によってその計画は狂い、両社の合併話は延期されることとなった。

コロナ禍以前、両社の列車は英国、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツの各国を結び、1日に計112本を運行。年間で1900万人近い乗客を輸送し、2018年の売上高は両社合計で16億7000万ユーロ(約2206億円)に達していた。ユーロスターは、ロンドン―アムステルダム間直通列車の運行を開始するなど、順調に業績を伸ばしていた。

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