環境問題が後押し、欧州「2大国際列車」の合併計画 ユーロスターとタリス、コロナ禍鎮静で再始動

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欧州委員会の承認とは、独禁法などに抵触する恐れがないかの確認である。これらのすべての合意と承認が得られた段階で、初めて正式に両社が合併することになり、その後は2つの事業者の輸送計画や車両の配置計画、それぞれの販売チャネルで得られる相乗効果などを検討することになる。

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そして最も重要なブランド名については、2023年をメドにユーロスターのブランドで統一することが明かされた。1996年以来親しまれてきたタリスのブランドは、合併が正式に決まれば27年目にして姿を消すことになる。

合併が成立した後、これまで両社の列車が運行してきた各国間の移動は、どのように変化するだろうか。

合併後の国際移動はどう変わる?

合併とブランドの統一があったからといって、それまでの運行系統に大きな変更が生じることはなく、当面は今の状況が維持されるはずだ。ただ、冒頭で紹介した「グリーン・スピード計画」の5つの目的で述べられているチケットの統一により、両方の列車を乗り継ぐ場合でも1枚のチケットで利用が可能になり、また乗り継ぎがスムーズにできるよう、ダイヤが調整されるだろう。

また将来計画として、ユーロスターはいったん白紙となったイギリスからドイツへの直通列車での乗り入れを諦めてはおらず、再び両国を結ぶ列車運行の可能性を模索することになるはずだ。

ドイツ鉄道のICE3(手前)と顔を並べたタリス。合併後、イギリスからのドイツ乗り入れは実現するか(筆者撮影)

だがEUを離脱したイギリスは、加盟国間で出入国審査なしの国境越えを認めるシェンゲン条約にも加盟していないためパスポートコントロールが必要不可欠で、現在もそれが大きな足かせとなっている。ユーロスターのオランダ乗り入れが計画された際、出入国管理の面でイギリス・オランダ両政府の折り合いがつかなかったことが、オランダからイギリスへの直通列車運行の妨げとなり、長らく「イギリスからオランダへの片方向乗り入れ」という、中途半端な状況を生み出す原因にもなった。

イギリスからドイツへの乗り入れ実現のためには、ドイツ国内の停車駅構内に出入国管理事務所と制限区域を設けなければならない。これが今後の課題となってくるのではないだろうか。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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