知らず知らずに「部下をつぶしている」上司の言動 自分の考えや感情を押し付けていないか

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また部下をつぶしてのし上がっていく上司の場合は、それなりに業績を上げている場合が多いのです。組織の中でのし上がっていく人は、部下よりも上司のことを気にかけます。部下と飲みに行くよりも、その人が課長であれば部長と飲みに行く機会が多い。そのようにして会社の上層部とのパイプを太くしていきます。

反面、部下へのケアやサポートに充てるはずの時間を上層部との付き合いに充ててしまうため、仕事のパフォーマンスが上がらない部下のことは「あいつは使えない」と切り捨てます。代わりに「できる部下」を配下に集めます。できる部下を配下に置けるのも、上層部との太いパイプがあるからこそできることです。

部下いじめでなぜか評価が上がる?

またこんな例もあります。課長が部下をいじめることによって退職に追い込んだり、給与カットなどを行えばそれだけ人件費が浮いて、その課長の評価が上がる。すると、その課を束ねている部全体の評価も上がり、部長の評価も高くなる。

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そして、部長は役員から目をかけられ、優遇されるのです。つまりいじめをする上司に限って、業績を上げやすいという構造があります。その業績は部下の犠牲の上に成り立っているというのですから、何とも皮肉な話です。

多くの従業員は、そういう事情を知っていますから、自分や自分の周りでいじめがあっても、怖くて通報なんてできません。またスピークアップ制度などの社内通報制度を採用していない企業も数多くあります。

いじめの被害者は、そんな会社はいっそ辞めてしまえばいいのでしょうか。一概に辞めた方がいいとは言い切れません。自分や家族の生活を維持していかなければならないし、次に入った会社にいじめがないかどうかなんて見極めることはできませんから。

ただ、1つ言えることがあります。長い目で見れば、いじめが頻繁に行われている会社はいつか破たんします。たとえば、上司が部下を犠牲にしている会社では、部下は育っていきません。部下が育たなければ将来会社を担っていく人物がいないわけですから、その会社に未来がないのは明白でしょう。 

見波 利幸 日本メンタルヘルス講師認定協会理事

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みなみとしゆき / Toshiyuki Minami

1961年生まれ。大学卒業後、外資系コンピューターメーカーなどを経て、1998年に野村総合研究所に入社。主席研究員としてメンタルヘルスの研究調査、研修開発に携わり、日本のメンタルヘルス研修の草分けとして活躍。2015年より日本メンタルヘルス講師認定協会代表理事に就任。研修、講演、カウンセリング、職場復帰支援、危機対応、メンタルヘルス講師の育成などを精力的に行っている。著書に『心が折れる職場』『上司が壊す職場』(以上、日経プレミアシリーズ)など多数。

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