いつもの薬「もらうだけ通院」は日本で減らせるか 繰り返し使える「処方せん」の実現可能性
さて、リフィル処方が現実化されるのであれば、オンライン診療のように限定的に一部の地域で実行され、患者さんの服薬状況への悪影響がないか、慢性患者の体調変化兆候が見逃されないか、慎重に進めていくことが推測されます。そのうえで、先述のデメリットを補う仕組みが検討されるでしょう。例えば、次のような内容は検討されうるかもしれません。
● 薬局で、状態確認の結果そのまま調剤することが不適当と判断された場合、受診を勧め処方せんを変更してもらう
● 再診療の減収益分を補填する報酬上の措置。例えば、薬局ー医師間のコミュニケーションで治療の質を担保する動きに対する報酬等
● 医療用麻薬や向精神病薬など不正流通に繋がりやすい医薬品の処方制限
もちろん、リフィル処方に関係なく対応すべき要素も多分にありますし、今でも本当に長期処方の患者さんの薬剤管理が現実にうまくいっているのか振り返らなければなりません。処方が長期化すると、もうすぐリフィル処方がなくなるタイミングで薬局が患者さんに対してサポートできるかも大事でしょう。制度が現実化する前に患者さんサポートの仕組みを整える必要があります。
リフィル処方が現実化した場合どうなるのか?
リフィル処方が現実化すると、患者さんの“動線”が大きく変わるでしょう。電子処方せんの仕組みもあわせて検討されていますが、医療機関でもらった処方せんを門前の薬局へ持参するという立地依存の動きが薄まりそうです。
リフィル処方を近くの馴染みの薬局へ送り調剤してもらう、宅配便等で自宅へ送ってもらうなど、規制緩和の程度やインセンティブの多寡によってサービスが多様化していくでしょう。また、病院での待ち時間がなくなるとすれば、気になるのは薬局の待ち時間ですが、昨今は事前に携帯アプリで処方せんの写真を送って来局前にあらかじめ薬を用意してくれるサービスを展開する薬局も増えています。そうした要素も薬局を選ぶ理由になりうるでしょう。
医療機関の近くでなくとも、郊外型の薬局にも十分逆転の可能性が出てくると考えられます。また近年、処方せんなしで病院の薬の約半数を取り扱い販売する「零売薬局」が知られつつありますが、受診の手間を省きたい患者さんを取り込んでいるこうしたビジネスには打撃となるかもしれません。
医師側からは、再診期間があいた患者さんの状況が把握できていないことは不安材料なので、的確な状態確認のフィードバックが薬局からなければ、安心してリフィル処方は出しづらいでしょう。しかしながら、現実的には薬局側が人力で状況把握してフィードバックすべき慢性患者さんの選別を行うことは困難で、現在でも多くの薬局で服薬期間中の患者さんの状態は把握できておらず、多くの場合次回来局を待つのみとなっています。
今後、ICTの導入が進み携帯アプリやウェアラブル端末による健康状態のモニタリングや患者情報基盤が整備され、よりタイムリーなサポートが促進されるでしょう。医療機関としても、処方期間をこえても来院・来局がない患者に対して状態確認のアプローチができるようなシステム上の仕組み構築がより一層求められるではずです。また、そうした仕組みの下に医師へ的確な情報をフィードバックされれば、医師側も安心してリフィル処方を出せ、患者さんも安心して治療に向き合っていけるのではないでしょうか。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら