いつもの薬「もらうだけ通院」は日本で減らせるか 繰り返し使える「処方せん」の実現可能性

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一方、薬局側では分割した理由を書類に書き込んだり、後日別の薬局で残りの調剤が行われる可能性もあることから、あらかじめ処方せんの写しをとっておくなどします。薬局側の業務としては、イレギュラーな手数が増える形になるのでなかなか浸透しにくい側面もあるように感じます。

もちろん、短い期間に区切って患者とコミュニケーションの機会があるので、残薬の確認をしやすいとか、副作用や飲み方の問題に気づきやすいとか、患者さんの状態や意見を反映しやすい等メリットはありますので、一長一短です。

なお、5月の日本薬剤師会による政策提言では、「再使用可能処方箋の導入」という言葉でリフィル制度に沿ったものの導入を訴えており、慢性疾患患者に対して分割調剤の処方箋様式を見直すことで再使用を可能とし、それに合わせた運用ルールを策定することを求めています。

一方、リフィル処方は?

一方リフィル処方は、同じ処方せんを反復して利用できるという、直感的に理解しやすい仕組みのように思います。コンタクトレンズの処方せんを受け取られる方はそれに近いものとイメージされるとわかりやすいでしょう。

慢性疾患患者で安定しているなら、年単位で利用できるリフィル処方せんを受け取れれば便利でしょう。ただ、あまりに長期となってくると、リフィルの期限切れを忘れかねないので注意が必要です。ここで、リフィル処方のメリットとデメリットを整理すると次のようになるでしょう。

<メリット>
【患者視点】
病院に行く手間と時間を節約できる
医療費の削減(患者さんにとっては再診療の削減)

【医療機関視点】
医師の外来診療の労働負担軽減
経過観察や服薬指導といった、患者の対応に時間を使える
<デメリット>
患者さんの状態悪化に気づく機会が減る
通院が減るため、病院やクリニックの収益が減少する
医薬品を余分に受け取り、不正に流通する可能性がある
患者さんの病院離れ

患者さんの通院負担軽減とともに、コロナ禍で人との接触機会が減らせるという意味でもポジティブです。

構造的には、医師が診療を行う経過観察が調剤薬局へタスクシフトされることになります。従って、薬剤師には数分の会話の中で臨床的な判断が求められるポイントが増えることになります。このあたりが、日本医師会が「リフィル処方は、慢性疾患患者の疾病管理の質を下げるリスクがあり、慎重な検討が必要です」と経済財政諮問会議等の議論に対して懸念を示している要素でもあるように思われます。

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