カシオが放った新型デジカメの斬新利用術 "分離型"でカメラの新境地を切り開く

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EX-TR100の特徴はレンズ部分と液晶部分を独立して回転させることができる点。それが「自分撮り」に最適だという事で中国を中心にブームが起きた。その結果、カシオのカメラ事業は13年3月期についに赤字を解消。各社のコンデジ事業が苦戦を強いられている中で、黒字を出せる事業となっている。

「自分撮り」しやすい機能にこだわった

腕などに装着して利用することもできる

この成功体験は今回発表されたEX-FR10に強く影響を与えている。発表会では、通常の自分撮りで撮影しづらい全身像も撮ることができることが強調された。カメラを腕などに固定するための付属アタッチアタッチメントも「自分撮りのしやすさにこだわった」(事業企画)という。

現在、EX-FR10のようにカメラ本体と液晶を切り離して撮影できるカメラはない。しかし、機能面での競合になるであろうと目されるのが、ソニーの「DSC-QX10」などのレンズスタイルカメラと呼ばれる、スマホを使って操作するレンズ型カメラだ。ただ、こうした製品はスマホとの通信にWi-Fiを使用しているため電池寿命があまり長くないのに対して、カシオのEX-FR10は「独自のプロトコルを使用したブルートゥースを使って通信をする。それによって起動時間を大幅に改善した」(事業企画)という。

また、GoProをはじめとしたアクションカムといわれる小型ビデオカメラも市場を席巻しているが、「アクションカムは動画がメインなのに対して、本機種は静画が主体。ターゲットもアクションカムはアスリートが中心だが、われわれは一般のコンシューマを狙っている」(中山仁氏)としている。

まずは日本と中国、東南アジアを狙う

当初の販売は日本のみで、そこから中国、東南アジアを中心に広げていく。当初月産台数は1万台。カシオの今年度における全世界での年間カメラ販売台数計画が140万台なので、そのおおむね1割弱に当たる数字だ。国内販売のみの販売にしては楽観的とも取れる数字だが、「むしろ手堅い数字だと考えている」(広報)と強気だ。

本当に想定通りの売上げを達成できるか。今までとまったく違ったタイプのカメラであるゆえ、どのように売れるかの見通しは不透明だ。それは「ある意味全方位的」(中山氏)というターゲット設定にも現れている。EX-TR100も結果としては大ヒットしたが、当初から「自分撮り」という使い方がメインになると想定していたわけではなかった。今回の製品もカシオの想定外の使われ方をする可能性が大いにある。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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