「リニアの町」になる中津川が期待する開業効果 駅、工場、車両基地を造って観光・産業を振興
中津川市は、2027年開業をにらんでさまざまな施策を検討してきた。開業時期が延びれば市にとっても打撃は大きい。「リニア工事に反対する静岡県民たちに中津川市を代表して何を伝えたいか」と青山市長に聞いてみたら、次のような答えが返ってきた。
「大井川の水資源に関する議論は、私たちが口を挟むことではない。しかし、私たちにとっては、リニア開業によって交流人口が増え、産業・環境にも寄与する。なんとか早く解決してほしい」
リニアの開業は市にとって大きなメリットとなるが、車両基地だけでなく、駅、橋梁、トンネルなどの工事が今後本格化するにつれて、建設残土の運搬に伴う道路の騒音・振動、開発がもたらす地域環境への影響は気がかりな問題となる。青山市長は「地域の意向に最大限の配慮を行って、安全・環境対策にしっかり取り組んでいただきたい」とJR東海に釘を刺すことも忘れていない。
違いを生む「メリットの有無」
静岡県でリニア問題を担当する難波喬司副知事が「難工事にゼロリスクはない」と発言しているとおり、すべてのリニア沿線自治体は、工事に際して多かれ少なかれ環境への影響を心配しているはずだ。
ではリスクをゼロにできないことを承知のうえで工事にゴーサインを出した自治体と工事を認めない静岡県の違いは何かというと、考えられる点の1つがリニアが地域にもたらすメリットの有無だ。静岡を除く沿線の都県は新駅設置などのメリットが得られるが、大井川流域市町はリニア開業後に東海道新幹線の停車本数が増えるという間接的なメリットしか得られそうにない。リニアの車両基地もできることで産業活性化が期待される中津川市とは大違いだ。
南アルプストンネルの工事が水資源や環境に与える影響について、静岡県民が納得したうえで工事が着工するまでにはかなりの時間がかかりそうだ。JR東海が早期着工にこぎつけるためには、新幹線の停車本数増以外に静岡県へのメリットを提示するなど、視点を変えた取り組みが必要かもしれない。
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