「リニアの町」になる中津川が期待する開業効果 駅、工場、車両基地を造って観光・産業を振興
工業が栄える中津川市も人口減少や高齢化の流れは避けられない。そんな状況にあってリニアはまさに事態を打開する救世主となる。
リニアが開業すれば東京(品川)と約58分、名古屋とは約13分で結ばれる。首都圏からの観光客増に加え、名古屋が通勤圏になることから定住者を呼び込むことができる。車両基地が完成すれば、JR関係者が移住する可能性もある。市では住宅用地の確保など受け入れ体制を整えたいとしている。また、車両基地や工場の運営に際しては、部品供給から清掃、保安などさまざまな産業が周辺に生まれる。その雇用創出効果は小さくない。
開業当初はJR東海の経験豊富な社員たちが車両基地を運営するにせよ、「その後は地元で育成した人材が担ってほしい」(青山市長)。リニアというハイテク技術を担う人材が中津川市から続々と登場すれば、中津川市は「リニアの町」どころか、「ハイテク産業の町」と呼ばれるようになるかもしれない。
「リニアが見える」も観光資産に
東京と名古屋を結ぶリニアは、走行区間の大半が地下やトンネルとなり、車両を自分の目で見ることができる場所は限られる。岐阜県駅は地上に設けられるが、高架橋はフードで天井まで覆われたり、左右が防音壁で覆われたりするため走行する列車を実際に見ることができるかどうかはわからない。
だが、車両基地は地上に造られるため、本線と工場の間を行き来する回送列車を見ることは可能だ。「リニア車両が見える」ということも市では観光施策としてアピールする。
また、JR東海は「新幹線なるほど発見デー」として、東海道新幹線の浜松工場を年1回程度一般開放しており、数万人規模の人が集まるビッグイベントとなっている。JR東日本やJR九州も新幹線の車両基地を定期的に一般公開して多くの来場者を集めている。市はリニア車両基地も観光資源になると考え、そのための協力をJR東海などに求めていくという。
とはいえ、いいことづくめではない。気になったのは安全祈願式とその後の関係者の挨拶において、リニアの開業時期について誰も口にしなかったことだ。南アルプストンネルの工事が大井川流域の水資源や南アルプスの環境に与える影響を懸念する静岡県が、いまだに着工を認めていない。そのため、2027年に予定されていた開業をJR東海は事実上断念した。南アルプストンネル着工のメドが立たなければ、開業時期が決まらないというのが現在の状況だ。
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