半導体メーカーTSMCが日本に工場を設置する理由 熊本に8000億円規模の工場建設、水面下で進められた日台関係強化

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今回のTSMCの工場誘致は、日本の経済産業省の主導であると見られている。経産省はTSMCと毎月テレビ会議を行うなど緊密なコミュニケーションを行っており、誘致のための支援もつくばの研究開発センターだけにとどまらない。

すでに半導体不足が深刻化していた2021年1月26日、梶山弘志・前経済産業大臣は閣議後会見で、日本台湾交流会を通じて、政府として台湾当局に半導体メーカーの増産を働きかけていることを明らかにした。また、梶山前経済相は9月に日本テレビの「深層News」に出演した際、当時、一部で報道されていた熊本へのTSMC誘致構想について問われると、具体的なコメントはできないとしたうえで「半導体にしっかり日本の基盤を作っていかなくちゃならないことは事実。つくばの産総研(産業技術総合研究所)とTSMCで次世代の半導体の研究開発を行う形で始まっている」と回答している。

つくばでの研究開発には国から5年間で190億円が支援されるが、海外では数兆円規模の予算を用いて国策として先端半導体企業の誘致が行われている。このことに話題がのぼると「これまでにない形で予算を計上する、そして対応していくことが必要だと思う」と、梶山前経済相は述べた。

日本の半導体産業再興への足がかりになるか

米中の技術覇権対立を経て、半導体の安定的な確保は各国において経済安全保障の要となった。日本でも「半導体・デジタル産業戦略」をもって、半導体産業の基盤強化が国家事業へと転換したことがはっきりと示され、今回のTSMC誘致はまさにその具体策というわけだ。

TSMCの誘致について、日本のメディアからは日本の半導体産業の復興への足がかりになるのではないかという期待の声も聞かれる。日本の半導体産業はかつて50%以上の世界シェアを誇る基幹産業だったが、現在は大きく衰退し10%前後にまで落ち込んだ。現在、半導体産業における日本の強みは「前工程」と「後工程」に分けられる製造プロセスのうち、パッケージング等の「後工程」にある。

一方、TSMCは受託生産で世界最大手にまで成長し、ロジック(演算用)半導体の製造において最高水準の製造技術を有している。TSMCの工場誘致が人材の育成につながることは予想できるが、日本の半導体産業の再興へのカンフル剤になるのだろうか。

日本経済新聞によると、東京エレクトロン前社長で経産省の戦略検討会の座長も務めた東哲郎氏はこのように指摘している。東氏は半導体産業を知り尽くし「日本半導体産業の長老」とも呼べる人物だ。

「日本で先端ロジック半導体に関する基盤は失われている。製造プロセスやそれを支える人材、開発エンジニアが欠かせない。10年はかかるイメージで戦略を組みながら前工程を強化していく展望になる」

台湾『今周刊』
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