2期連続赤字、苦境の「貸会議室TKP」が待つ夜明け 長期貸しやワクチン接種会場などに商機も

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コロナ禍が生み出した新たな需要の獲得にも余念がない。

ウェビナーやライブ配信、家賃支援給付金の申請サポートなどの会場のほか、感染拡大防止のため大学が教室の外部への貸出を停止したことを受け、試験会場の需要も取り込んだ。ビジネス需要が落ち込んだホテルについても、コロナ軽症者の療養施設として4棟を一棟貸しした。

中でもTKPの業績に大きく寄与したのが、今年6月より開始したワクチンの職域接種だ。会場として貸会議室を無償で提供する代わりに、会場設営や当日の運営支援を受託。第2四半期(6~8月期)だけで15億円の売り上げをもたらした。

職域接種会場の提供を通じて、将来的な顧客開拓も見据える。「(職域接種の窓口となっている)人事・総務部とのつながりができた。来春の新人研修など、貸会議室の利用を受注するきっかけにしたい」(河野社長)。

「あと3~4カ月」の我慢

足元の需要をかき集めつつ、コロナ禍の収束を待つTKP。「冬眠」から目覚めるのはいつになるのか。

「10月に会議室(の利用)を解禁して、11月に泊まり込み研修を解禁する企業もある。そうした会社がTKPを使い始めれば、横にならえで(他社も)利用していく。あと3、4カ月だと思っている。来年の第1四半期(2022年3~5月期)には急回復すると考えている」。10月14日の決算説明会の場で、河野社長はそう期待を込めた。直近では懇親会の予約も入り始めており、料飲部門が上向けば、業績の持ち直しが期待できそうだ。

もっとも、回復は「水を刺されなければ」(河野社長)という条件付きだ。貸会議室の受注は入ってきているものの、企業は感染拡大を懸念して恐る恐る予約を入れている状況だといい、楽観視はできない。

河野社長は足元の事業環境について、こんな表現を持ち出した。「ようやく光が見えてきた。今はいちばん寒い朝の5時。ここが最悪期だ」。7月の第1四半期決算説明会では同様に「(今は)朝4時から5時」と言及しており、TKPの時計は四半期毎に1時間針を進めていることになる。

当初の計画では下期に曙光が見えるはずだったが、会社が業績予想を下方修正したとおり、それはかなわなくなった。気温が暖かくなったころ、TKPは「ご来光」を拝むことができるのか。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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