「渋沢栄一」後も「1万円札」が廃止にならない理由 現金とキャッシュレスの絶妙なバランスは続く
当局の用語は特殊で、日本銀行では、紙幣は銀行券、硬貨は貨幣といい、財務省では紙幣と貨幣といういい方をする。今回、新硬貨の発行は500円玉だけで、今年2021年11月に先に発行(使用開始)される。
実は、新紙幣・新貨幣はだいたい20年ごとに発行されることになっており、きちんとその間隔で実施されている。まとめて本論では「新紙幣の発行」とする。
新紙幣は2024年の上期に発行される予定で、デザインなども印刷が開始された。新紙幣を発行する理由は筆者の考えによれば以下のようなものである。
新紙幣・新貨幣を発行する5つの理由
まず、紙幣に使われる人物の条件というものは以下のものである。すでに亡くなった人、ひげや髪など“複雑”な人、“偉人”(よいことをした人)などとなっている。さらにはその社会経済情勢や政治にも左右される。理由はなかなか明かされないが、渋沢栄一は500社の起業に関わったことから、今後、日本で起業が盛んになることを願っているのかもしれない(しかし500社とは起業に関わるにしてもすごい数で、どうやったのだろう)。
また聖徳太子はお札の種類は変わりながらも、昭和5年(1930年)から採用されている。戦後も長い間使われ続けたのは意味がある。GHQが戦争を望む人物は避けるべしということになり、「和をもって尊し」を唱えた聖徳太子が好まれたのである。
人物の条件にある複雑さにみられるように、偽札(偽造紙幣)防止が、新紙幣の発行は最も重要な目的である。偽札は経済・社会不安、国家の転覆の可能性もあるので、偽札製造は重罪となる。最近でも外国人による「聖徳太子の旧1万円札」の偽札が犯罪に使われたのは残念である。
最近は注力していないが、以前「円の国際化」という経済政策があった。これは特にアジア諸国で反発が強かった。筆者も国際的な学会で本件を報告したことがあったが、「日本の侵略主義」と誤解され厳しい意見が相次いだ。
しかし、アメリカでは100ドル札を130億枚印刷している。アメリカに行ったことがある、駐在したことがある方にはわかると思うが、アメリカ国内の通常の商取引では100ドル札は“使えない”。100ドル札とは輸出用の“商品”なのである。
しかも、実際にはアメリカの“最大の輸出品”なのである。これが国家的には経常収支赤字を埋める。日本ではわずか9億枚である。ここをもっと増やそうとするのは当然のことである。すでに日本は貿易赤字国でもある。
上記の「円の国際化」とも近いが、海外からの受託製造も目的の1つである。日本の国立印刷局(紙幣製造)や造幣局(硬貨製造)は、海外からの紙幣などの受託製造を行っており、その拡大の営業的な役目もある。
特に今回は世界最高水準の偽造防止の技術が織り込まれ、その強いアピールになる。後で、論じるが紙幣はキャッシュレス化でいずれは減っていく運命にある。日本郵便の郵便事業のようなものである。そのため海外などからの受託が重要になってくるのである。
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