地味でも年商1000億、東芝「鉄道ビジネス」の実力 車両は少ないが技術に強み、自動運転にも注力

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東芝インフラシステムズ鉄道システム事業部車両システム技術部の富川英朝部長は、「地方鉄道での自動運転を目指しながら、都市鉄道でも活用できるセンサー技術を中心とした開発を行っている」と話す。

いずれのレベルにおいても列車走行上の安全確保は重要課題である。人や車など前方の障害物をできるだけ早く感知し、緊急停止など次の行動を促す必要がある。

前方検知装置は車載カメラを活用、距離を計測するとともに線路を識別して走行上の空間に支障物があるかどうかを探索する(画像:東芝インフラシステムズ)

そこで、車載カメラを活用した前方検知装置を開発、長野電鉄の協力を得ながら性能確認試験を行ってきた。運転席の上部に2つのカメラからなるステレオカメラを設置し、2枚の画像から三角測距により距離を計測するとともに、線路を識別することにより支障物を見つけるべき空間を認識。走行上の空間に支障物があるかどうかを探索する。

試作機を用いて昼間、夜間、あるいは晴れ、曇り、雨といった時間帯や気象条件を変えて試験を実施し、検証を行ってきた。この結果、昼間に立った状態の人物なら200m先、高さと幅がそれぞれ45cmのダンボール箱なら150m先、線路に伏せている人物なら80m先で、検出率90%以上で検知が可能という。

AIやセンサーで存在感高まるか

「2015年から開始し、やっと形になってきた」と富川部長は話す。ただ、「われわれが想定していた以上にさまざまな条件がある。もっと経験値を増やす必要がある」。たとえば黒色系の衣服を着た人物では、それ以外の色に対して検出率が10%程度低下するなど、衣服の色の違いによっても検出に差が出るという。

「前方検知装置の試作機を実車両に搭載し、さまざまな環境の下でデータを蓄積、解析していく」と富川部長は今後について話す。現在は夜間に前照灯を点灯したときに運転士が目視確認できる200m先までの範囲に存在する支障物を検知する前方検知装置として開発しているが、さらなる検出距離の延長も図っていくという。

AIを活用した運行管理システムや自動運転に寄与するセンサー技術など、最新技術を取り入れた鉄道ビジネスは鉄道業界の人材不足解消につながりそうだ。見た目でわかりやすい車両の製造が少ないため、黒子的な立ち位置にある東芝だが、その技術力で存在感をますます高めていくことは間違いない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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