日立、仏タレス「鉄道信号事業」買収の全舞台裏

MaaS展開拡大へ「料金収受システム」にも着目

国際鉄道技術見本市「イノトランス」でのタレス社のブース(記者撮影)

8月4日14時35分、日立製作所から報道各社に向けて1通のメールが送られた。タイトルは「説明会ご案内」。フランスの防衛・航空宇宙大手タレス社の交通システム事業を日立の鉄道子会社・日立レールが買収、その説明会を15時半から開催するという。

開始時間までわずか55分。あわただしいスケジュールにはわけがある。日本時間の15時半はフランスの8時半。タレスはフランスの株式市場に上場しているため、市場が開く9時よりも前に発表するには、このタイミングしかなかった。

タレスの鉄道信号システムは世界的にも評価が高い。「長年にわたって買収したいと考えていた」と、日立の鉄道事業を統括するアリステア・ドーマー副社長が、会見で顔をほころばせた。鉄道信号の分野はデジタル化による技術革新が進み、成長性が高いと考えられているからだ。「タレスの鉄道信号ビジネスはまれなアセット。今回は生涯の一度のチャンスで見逃せなかった」。

タレスにとっては「1割程度」

2020年度におけるタレスの交通システム事業の売上高は16.1億ユーロ(約2099億円)、償却前営業利益は0.8億ユーロ(約111億円)。日立に次ぐ国内2位の鉄道車両メーカー、川崎重工業や国内トップの信号メーカー、日本信号の売上高を大きく上回る。

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一方、タレス側から見た交通システム事業の位置づけはやや異なる。タレス全体の2020年度売上高は169.8億ユーロ(約2.2兆円)。事業別では防衛、航空宇宙、サイバーセキュリティーの3事業が売上の9割を占め、交通システム事業は売上の1割程度にすぎない。

タレスは事業の選択と集中を行い、交通システム事業を売却することを決断した。交通システム事業を売却することで、「われわれは航空宇宙、防衛、デジタル技術という長期的に成長できる3つの事業に集中することができる」と、タレスのパトリス・ケインCEOはコメントする。

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