それでも、学校の換気でいえば、2003年以降に建てられた校舎では、容量は必ずしも十分とはいえないまでも教室ごとにシックハウス症候群の原因となる有害物質を除去するための換気扇が設置されており、それ以外にも外気側の壁に軸流式換気扇(プロペラファン)が備え付けられているところもある。
「こうした換気扇を常時回しておくことは、感染対策としては有効」と倉渕さんは言う。
そして機械換気がない教室、校舎で大事になるのが、窓開け換気だ。前出の「学校の新しい生活様式」によると、可能な限り常時、困難な場合は30分に1回以上、数分程度、2方向以上の窓を開けることが推奨されている。
換気の実験の結果は?
ただ、それだけでは必要な換気が適切に行われているかわからない。そこで、倉渕さんらは都内の公立中学校の校舎を用いて実験を実施した。
一般的な広さの教室内に二酸化炭素計測器(CO2モニター)を設置し、児童生徒40人で、1500ppmを維持するためには、どれくらいの窓開け換気が必要かを調べた。窓明けのパターンは、窓を全開にした状態からすべての窓を閉じた状態まで8つ設けた。
その結果、窓を全開にした場合は、わずか1分程度で二酸化炭素濃度が1500ppmどころか、外気の濃度(400ppm)と同程度まで低下していた。
一方、これからの暖房が必要になることを考慮し、熱効率をできるだけ下げない状態で1500ppmを維持できるギリギリの窓明けの状態をみた。すると、外側は上の欄間(頭上にある窓)4カ所を10cmずつ、廊下側は欄間4カ所と吐き出し口(足下にある小さな窓)2カ所を10cmずつ開けた状態で十分であることがわかった。
「さらに、これは中学生が40人いるという想定なので、生徒数が20人に半減すれば換気はこの半分で済みます。また、小学校高学年の児童から中学生の1人当たりの換気量を1とすると、保育園・幼稚園児や小学校低学年の児童は0.7倍、高校生以上は1.4倍なので、それに応じた対応を取ればいいでしょう」(倉渕さん)
つまり、常時換気であれば、外側数カ所、廊下側数カ所の窓を10センチ程度開ければいいということになる。「この実験は無風のときに行われたので、風があればもっと換気量は増える」と倉渕さんは言う。
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