油断大敵の「空気感染」学校保育園に今必要な対策 換気の専門家に「より有効な方法」を聞く

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ただ、この1000ppm以下という数値は、新型コロナの感染対策を踏まえたものではなく、もとからあった厚生労働省の建築物衛生法に沿ったもの。3000平米以上の大規模な公共性の高い建築物では順守しなければならず、かつ、法律で2カ月に1回の立ち入り調査が義務づけられている。罰則規定は設けられていないが、守られていなければビルの管理者に対して指導が入る。

つまり、大型の商業施設などでは新型コロナが流行する前から換気の基準を満たしていたわけだ。

幼稚園や学校の場合では?

では、幼稚園や学校はどうだろうか。

文部科学省の「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~『学校の新しい生活様式』~」には、換気のやり方や目安となる指標として、「(前略)学校環境衛生基準では、1500ppmを基準としています。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会では、マスクを伴わない飲食を前提としている飲食店等の場合には、1000ppm以下が望ましいとされており、昼食時には換気を強化する(後略)」と記されている。

これは、平成30年度に改定された「学校環境衛生管理マニュアル『学校環境衛生基準』の理論と実践」の内容とほぼ同じだ。

ここで疑問になるのは、従来からある換気のレベルで、はたして新型コロナの感染対策となりうるのかという点だろう。倉渕さんは、

「それに関しては議論もあるかと思いますが、この1000ppmという数値は、一人当たり30立方メートル/時の換気量が相当し、カナダの医療機関における結核の院内感染リスクの検証の結果を受けてのものであるため、感染症のリスクを減らすという意味では、必ずしも的外れではありません。学校の場合、生徒数が多く、設備の制約がある条件では1000ppmを守ることが難しいので、少なくとも1500ppmに維持することが必要と考えられます」

と述べたうえで、学校の場合は「先に挙げた大型の商業施設の基準でくくれない」とも指摘する。

「それは、学校と一口で言っても、機械換気設備の、しかも空調と換気が分かれているセパレート型が設置されている学校もあれば、ずいぶん前に建てられた何も換気設備のない校舎もある。教室に在室する児童生徒や教師数によっても、必要となる換気の条件は変わります。機械換気だけで済む学校もあれば、窓開け換気が必要な学校もあって、学校間格差がとにかく大きい。ひとくくりでどうすればいいかが言えないのです」

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