小学校にこそ学んでほしい幼児教育の優れた実践 5歳児からの一律教育構想と並行での議論を
小学校教育の前倒しと幼少のなめらかな接続は違う
おおたとしまさ(以下、おおた):7月8日の文科省の初等中等教育分科会の資料では2つの箇所がひっかかりました。「幼児期の教育と、小学校から実施される義務教育とを円滑につないでいくため」っていうのがひとつ。これだけを読むと、いわゆる小1プロブレムの解消をしたいのかなと読めたんですよね。
でも同じ文書のすぐ下には、「ことばの力、情報を活用する力、探究心といった生活・学習基盤を全ての5歳児に保障する」という表現が出てきて、これは早期からのインプットを意図しているのかなと読めます。前編で話題になったイギリスの例のように、幼小の接続をなめらかにすることと、小学校教育の前倒しとは意味合いが違うと思うのですが。
汐見稔幸(以下、汐見):僕は可能な限り善意でとろうとは思っています。僕が幼児教育の世界に入ってきて最初に書いた本が1986年の『幼児の文字教育』でした。当時、幼稚園や保育園では文字を教える必要はないと言われていたんですが、実際には小学校に入ったときに文字がまったくわからないと、「勉強ってよくわからない」ということにいきなりなってしまう。
つまり、家庭の教育力の差が出てしまうということです。そういう余力がない家庭の子どもたちが学校で落ちこぼれないためにどうしたらいいかという問いを立ててもいいじゃないかという問題提起でした。
おおた:なるほど。
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