JR東海「新幹線オフィス」、東日本とどう違うのか 東海道新幹線「のぞみ」10月から専用車両を設定
機器貸し出しや無料Wi-Fiサービスの増強といった点を考えると、N700AタイプよりもN700Sに乗るほうが断然お得だが、N700Sの運行本数はまだ少ない。しかもEXサービスでは予約したい列車がN700Sかどうかは確認できない。どうしてもN700Sに乗りたい場合は、現状ではホームページや窓口で確認するほかない。
金子社長は「移動行程にわたってシームレスで仕事をできるような環境を整えたい」とも語っている。これを実現するのが、主要駅に設置されたビジネスコーナーだ。東京駅では改札内待合スペースの一部を改良して、無料の半個室タイプのビジネスコーナーを5席導入したほか、座席の脇にコンセントポールを3カ所設置した。空港の待合スペースでしばしば見かけることができる。
これらにより列車を待つ間に仕事をしたり、充電をしたりすることが可能となる。名古屋駅や新大阪駅にも設置済みだ。なお、ビジネスコーナーに使われている金属部品には引退した700系の車体を再利用したアルミ素材が使われており、それを示すプレートも貼られている。ビジネスコーナー利用時にこのプレートを探してみるのも楽しいだろう。
さらにEXサービスの会員向けとして今年12月に東京、名古屋、京都、新大阪の各駅にブース型のシェアオフィスを導入するほか、東京駅直結のビルにビジネスラウンジや会議室も設ける。こちらは有料でのサービスとなる。
のぞみに導入されたビジネス車両は3月までの試行だ。しかし、無料Wi-Fiを増強し、来春以降は7〜8号車間にある喫煙ブースを改良したビジネスデッキを試験導入することを考えれば、3月で打ち切りということは考えにくい。JR東海も「利用状況を踏まえて、サービス内容を改善していく」という意味での「試行」だという。
試行だが「終了は考えていない」
無料Wi-Fiの増強はグリーン車である8号車でも実施される。その利用状況次第では、グリーン車でもビジネス化に向けた施策が展開されるかもしれない。
ブース型シェアオフィスやラウンジは有料だが、それ以外は基本的に無料であり、これらの施策が即収益増につながるわけではない。だが、JR東海はサービス改善が利用者の増加につながると考えている。新幹線にとってのライバルは航空機だ。対航空で見た場合、東京圏―大阪圏における新幹線の旅客シェアは85%。つまり、航空機から客を奪うことで15%のシェア拡大余地がある。同様に東京圏―岡山圏や東京圏―広島圏における新幹線の旅客シェアは7割程度なので、3割程度のシェア拡大余地がある。
コロナ禍による県をまたいだ移動の自粛で出張からウェブ会議などに切り替わる動きも見られるが、移動時間を有効に使えるということが認知されれば、新幹線への回帰が期待できる。
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