3カ月ぶり輸出増でも、力強さなし

「日本抜き」の構造変化の影

特に日本からの輸出増が期待されていた米国向けの減少には失望感が強まっている。何よりも目を引くのが自動車輸出の落ち込みだ。米国景気の拡大が続いているにもかかわらず、台数ベースでは前年比13%もの減少となった。年初から各社のメキシコ工場での生産が始まったと同時に、国内の輸送機械の生産能力は5%も削減されており、構造的な落ち込みであることは否定できない。

米国向けの輸出金額のうち、4割を占める自動車など輸送用機器は、対米輸出全体の動向を大きく左右する品目。米国景気と輸出動向は連動しなくなっているとの見方も浮上しつつある。

またアジア向け輸出も一向にかんばしくない。13年まで、数量ベースでは2010年を100として85以上の水準を維持してきたが、円安進行後の14年に入ってからは85を超えることは少ない。輸出企業からは「現地企業が力をつけてきており、ガチンコ勝負が増えている」(輸送用機器)など、新興国企業との競合を余儀なくされている例も少なくない。

三菱総合研究所では、「リーマンショック以降、輸出の伸びは世界経済の成長率を明確に下回っており、構造変化が進んでいる可能性が高い」と指摘する。新興国の技術力向上や供給力拡大により、日本を介さないサプライチェーン網の構築が進んでいる可能性があるためだ。

これまで海外で機械設備など投資財などの生産が増加すれば、日本からの部品などの輸出も増える傾向にあった。しかし、最近ではそうした相関関係が小さくなっていることも、その裏付けだと指摘する。三菱総研では、今後の景気回復を見通すうえで、輸出の牽引力を従来ほど期待しない方がよさそうだとみている。

期待はアジアでの設備投資回復、機械受注大幅増

世界各地域の景気動向についても、霧は晴れていない。国際通貨基金では7月に、世界経済見通しを3.4%成長に下方修正した。一部新興国の見通しが当初ほど楽観できなくなったことや、地政学リスクが高まっているためだ。

もっとも、明るい材料がないわけではない。機械類の輸出は力強く伸びる可能性がある。機械受注統計では外需の伸びが4─6月に前期比42%も増加しており、輸出までにタイムラグを勘案すれば、年後半の輸出に増勢が表れてくる可能性がある。

機械メーカーの受注残高は、リーマンショック後、最高水準に跳ね上がっている。アジアでのスマホ関連やLED投資が活発化しているほか、国内でも昨年まで低調だった製造業において投資予算がつく案件が増えているとの声がある。

日銀内でも外需の弱さは認識しつつも、もたつく東南アジア経済は下げ止まりから正常化に向かう局面にあるとの見方がある。特に設備投資が回復しても、その影響が日本からの資本財の輸出などに表れてくるまでには、もう少し時間がかかるとの見立てだ。

農林中金総研の主席研究員・南武志氏は、ひとまず「輸出減少が回避されたことで、国内景気も底割れする状況にはない」とみている。とはいえ、従来、内需の低迷を補ってきた輸出のエンジンが構造的に弱まっている可能性は大きい、という。

「家計需要の低迷を補うほどの輸出増は期待できず、下期にかけて景気・物価が再加速する可能性は薄い」との見方だ。日銀の政策変更(追加緩和もしくは目標変更)に加え、消費税の再増税判断に注目が集まるが、追加の経済対策が策定される可能性も十分あるだろう」としている。

 

(中川泉 編集:北松克朗)

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