苦戦の鳥貴族が「トリキバーガー」で見出した活路 ファストフードであるゆえに直面した課題とは

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確かに、チキン好きという意味では日本人も負けていない。コロナの影響でテイクアウト専門の唐揚げ業態が多数出現しているのは、低コスト、小さなスペースででき、他業種からの転換がしやすいからだが、最も大きな理由は唐揚げが好きな人が多いからだ。

北海道のザンギ、中津からあげなどさまざまなご当地メニューがあるのを見てもわかるように、鶏肉の種類や部位から衣、揚げ方、味つけなどバリエーション展開も広がりがあり、食べ比べる楽しみもある。

そう考えると、チキンバーガーも「バーガーチェーンが一応そろえているメニュー」という位置付けから、今後大きく成長していく可能性は意外と大きいのかもしれない。

少なくとも、TORIKI BURGERオープンの注目度は高かったようで、8月23日のオープン日も同社が想定していた以上の来店があったという。また開店後約1カ月後の現時点も一定の客足があるようだ。

筆者が訪ねたのは平日の午後4時と、ランチやディナーの時間帯ではなかったものの、客の入りが途切れず、イートインスペースも3分の1程度が埋まっていた。

テイクアウトが約7割

1号店の出店地である大井町は、周辺に新旧の住宅地や商店街を抱える賑わいのある街だ。3線が接続するターミナル駅で、駅前には商業施設や商店街なども集積している。住む人、働く人、学生など客層が広く、昼夜を問わず利用人口が多い。これらのことが、大井町に出店した理由だという。

イートインスペースにはテーブル36、カウンター18の54席がゆったりと配されている(写真:TORIKI BURGER)

開店間もない現時点での人気メニューはやはりトリキバーガー。次に焼鳥バーガー、つくねチーズバーガーだそう。鳥貴族による新業態の実力をはかっているというところだろう。なお、テイクアウトは約7割とのことだ。

また、メニューの品ぞろえや味ともに、ビールなどとの相性がよさそうなのだが、今後アルコールの提供予定はないという。

同店では今後は年4品程度の新商品投入や入れ替えを検討している。客を飽きさせず、SNSなどでの宣伝効果を高めるためにも、季節商品の展開は重要だろう。

高田氏によれば、3年で直営店の10〜20店舗体制を目指し、以降はフランチャイズ制で展開を加速させていくという。

「海外への展開もにらみ、いずれは鳥貴族に比肩する事業に育てていきます」(高田氏)

まずはこの3年で、チキン専門バーガーとしての存在感を確立できるかが勝負となるだろう。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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