苦戦の鳥貴族が「トリキバーガー」で見出した活路 ファストフードであるゆえに直面した課題とは

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今回のTORIKI BURGER立ち上げの理由について、TORIKI BURGER代表取締役社長の高田哲也氏は次のように説明する。

ヤンニョムチキン。胸肉にシナモン風味の甘辛いたれがからめてあり、はっきりした味のバーガーに仕上がっている(筆者撮影)

「鳥貴族は関東、関西、東海の3エリアで展開してきましたが、いずれはほかのエリアにも広がり、国内で飽和状態になるだろうということで、新業態の構想は数年前からありました。そこへ今回コロナ禍に見舞われてしまった。そして今後も別の感染症による同様の事態が発生する可能性もあります。そこで居酒屋事業に加えて第2の柱となる新事業創出の必要性を認識し、経営基盤の強化とさらなる成長へつなげるため、当初の計画を前倒しして立ち上げに至った次第です」(高田氏)

ファストフードであるゆえの苦労

冒頭にも触れたように、鳥貴族の強みはリーズナブルであることだ。全品298円(税込327円)に統一したわかりやすく、選びやすい値段設定が大きな特徴。また、低価格を実現するために、メニュー数の絞り込み、調達コストの低下、オペレーション効率化を徹底してきている。

店舗のカウンター。厨房にはファストフードとして効率的なオペレーションを実現するべく、工夫を凝らした。1年の開発期間をかけて独自の製造システムをつくりあげたという(写真:TORIKI BURGER)

新業態でもそのノウハウを踏襲し、レギュラーのセットメニューはモーニングメニュー490円、デイメニュー590円で統一した。

ただし、ファストフードであるゆえの苦労もあった。

「おいしさと品質にこだわり、食材は国産を使用している中で、ファストフードにおけるボトム価格帯に設定するのは難しい課題でした。原価などをお教えすることはできませんが、苦労した分、コストパフォーマンスには自信があります。またファストフードとして商品をお客様に早く提供するための厨房設計にも苦労しました」(高田氏)

今回の新業態開発に際してプロジェクトリーダーを担当してきた高田氏は、1988年に日本マクドナルドに入社、統括マネージャーや営業部長などを歴任し、2010年に現鳥貴族ホールディングスに入社した経歴の持ち主。新業態では同氏の経験が大いに物を言ったのではないだろうか。

ただ、コロナの中でテイクアウトにも柔軟に対応できるファストフードが好調とはいえ、日本では肉ブームを背景に、牛肉100%のグルメバーガーなどがトレンドとなっている。ファストフードチェーンでも、高付加価値・高価格帯の商品展開に力を入れている。その中で、チキン専門店としてどのように勝負していくのだろうか。

「国内でのファストフード、ハンバーガーの市場は大きく、コロナ禍でも好調を維持している点が魅力です。また、アメリカでは『Chick-fil-A』(チックフィレイ)などの専門店も業績を伸ばしています。このことからも、チキンバーガー専門店には国内市場の余地や海外展開の可能性もあると捉えています」(高田氏)

チックフィレイは日本には進出していないものの、アメリカで非常に人気のあるチキンサンド専門店。そのほかアメリカではKFCやポパイズが有名チェーンとして挙げられる。最近ではアメリカ・マクドナルドもチキンサンドを発売するなど、チキンサンド市場が盛り上がっている様子だ。

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