一方で、女性のキャラクターはといえば、ぶっ飛んだハジケたキャラが台頭する。これは等身大というよりは、女性の抑圧された内面をデフォルメした形で解放したキャラクターが、いよいよ表面化するようになったととらえることができるだろう。
そうした女性像を受けてなのか、現実世界がそうだからなのかわからないが、外でも家でも女性に囲まれてたじたじの父親が、男らしく生きようと孤軍奮闘するコメディ『Last Man Standing』(2011年~)が登場したときは、何となく切なくなったものだった。『24‐TWENTY FOUR‐』(2001年~)の24時間闘うジャック・バウアーは、日本では闘う企業戦士たちの圧倒的な支持を受けたが、アメリカで現在多数を占めているのは、ストレス社会で生きづらい思いをしている等身大の男性像なのだ。
エミー賞17回、成人指定…TVの常識を覆す秀作
『ザ・ソプラノズ』は、有料チャンネルHBOで全6シーズンが放映された。エミー賞は通算17回の受賞を誇るほか、数々の主要な賞に輝き、アメリカのTV史に残る秀作として、オールタイムのベスト作品のリストにランクインするほどの高い評価を得ている。
一方で、その過激な表現により、成人指定を受けたことでも物議をかもしたが、映画並みの巨額のバジェットと時間をぜいたくに使った製作スタイルは、従来のTV の常識を覆すものとして画期的であった。本作の成功は、HBOのブランドを決定づける重要な位置を占めるものであり、アメリカのTV業界に大きな一石を投じることとなったモニュメントとしても記憶にとどめておきたい。
最後に、本作の成功の大きな要因のひとつとして、2013年に急逝した、主演のガンドルフィーニの名演なくしては語れないことを付け加えておく。極妻カーメラを迫力たっぷりに演じるファルコとの壮絶な夫婦喧嘩も見ものであった。ガンドルフィー二が作り上げた、非常に人間味のある恐るべきマフィア、トニー・ソプラノは、アメリカTV史上にその名を刻む秀逸なキャラクターである。
主演ガンドルフィーニの死を伝えるニュース ABC News「James Gandolfini Dead: HBO's 'The Sopranos' Star Suffers Heart Attack, Dies in Italy at Age 51」(英語)
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